米国を逆撫でする「クリミア軍事演習」 プーチンの狙い

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 朝(あした)にシリアで干戈を交え、夕べにはクリミアで大規模軍事演習。南に北に意気盛んなのがプーチン大統領だ。

「シリア内戦でアサド政権を支持するロシアと、反政府軍を支援するアメリカは、“反イスラム国”では一致するものの水面下では代理戦争の様相を呈し、危険な状態でした。ようやく12日からの停戦に合意しましたが、今度はロシアが2014年に一方的に併合したウクライナ南部、クリミアに陸海空軍を集結させ、大規模な軍事演習を始めました。アメリカはピリピリしています」(国際部記者)

 1万2000人に上る兵員を黒海とその近辺に配する演習に、米軍は1日4度も偵察機を飛ばすほどだ。ロシア機が米軍哨戒機に異常接近する事態も生じ、緊張は高まっている。

「領土的野心を捨てきれないロシアが欧州で軍事行動を起こすのでは、という不安は日本で想像する以上に欧米各国で深刻です。オバマ大統領の任期切れも近く、08年のグルジア(ジョージア)侵攻の再来が危惧されているのです」(同)

 陸・海・空でロシアとグルジアが戦火を交え、ロシアが一部地域の占領を今も続けるこの軍事行動は、ジョージ・W・ブッシュ大統領の任期最終盤に起きた。

 ロシア通の国際政治研究家は言う。

「旧ソ連の領土を取り戻すのがプーチンの悲願と囁かれ、近年では周辺各国の警戒感は高まるばかりです。親露派勢力が東部の占領支配を続けるウクライナは言うまでもありませんが、ポーランドやフィンランド、ルーマニア、バルト3国といった国のメディアまでがロシアの自国への侵攻に警鐘を鳴らしています。ウクライナの新聞など、数週間以内にロシアの全面攻撃が始まると断じています」

 ロシアの国内事情が鍵だ。

「そもそもロシアがシリアに参戦したのはウクライナ危機が遠因。世界的非難を逸らし、経済制裁の緩和を目論みましたが思うような成果は出せず、国内経済は深刻なままです。ところが18日には経済制裁後、初の下院選挙を迎えます。これは、18年3月の大統領選の前哨戦とも言われている。何としても求心力を高める必要があるのです」(同)

 北朝鮮以外にも、警戒を緩めてはならない国がある。

週刊新潮 2016年9月22日菊咲月増大号掲載

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