山本地方創生相、インサイダー捜査中止を画策(上) “知人”が調査対象の事件を国会質問で問題視
これといったスキャンダルにも見舞われず、安倍内閣は高い支持率を維持してきた。その慢心からか、金融犯罪グループとの接点と言える人物を重要ポストに抜擢したのである。山本幸三地方創生相(68)は、インサイダー捜査を阻むような国会質問を行っていたのだ。
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アベノミクスを応援して地方創生大臣に(自民党HPより)
いくら、“お友だち人事”だとか、“待機組”に配慮しただけの組閣だと批判されても、どこ吹く風なのだ。
8月初め、第3次安倍再改造内閣が発足したが、安倍晋三総理は相変わらず、“お友だち”を主要ポストに登用し、初入閣には当選回数を重ねたベテラン議員の雁首が揃った。
山本幸三地方創生相も大蔵官僚から政界入りし、衆院当選7回を数えて、ようやく大臣ポストを射止めた待機組だった。
「山本さんの入閣は、“アベノミクス応援団”の団長としての論功行賞という側面があります」
と、政治部デスクが解説する。
「筋金入りのリフレ派で、以前から大規模な金融緩和や財政出動の必要性を訴えてきました。自他ともに認める“経済通”なので、政治部よりも経済部の記者が事務所に出入りすることが多い。その一方、山本さんの周囲には、常にキナ臭い話がついてまわった。なかなか大臣の椅子に座れなかったのは、それが理由だとも言われていました」
例えば、相続税対策を依頼された資産家から、国税局への口利きの見返りに1500万円の手形を受け取った疑惑が持ち上がったり、元秘書がレンタルビデオ店に強盗に押し入って逮捕されたり……。
しかし、脛の傷はそれだけにとどまらず、さらにはここに来て、安倍内閣を揺るがしかねない“爆弾”の存在が浮かび上がってきたのだ。
その“爆弾”とは、“日興インサイダー事件”にまつわるものだった。
■日興インサイダー事件
そもそも、この事件はSESC(証券取引等監視委員会)が2011年の9月下旬、強制調査に乗り出し、その告発を受けた横浜地検によって、翌年の6月下旬に摘発された。
日興コーディアル証券の投資銀行副本部長だった吉岡宏芳被告(55)=上告中=が、横浜市にある金融会社の加藤次成元社長(71)=懲役2年6カ月執行猶予4年の一審判決が確定=に、公表前の株式公開買い付け(TOB)情報を漏洩したとして、金融商品取引法違反の罪に問われたのである。
司法担当記者によれば、
「事件当時、吉岡被告は三井住友銀行から日興コーディアル証券に出向していたのですが、銀行員時代から加藤元社長に自分の知り合いへの融資を依頼していました。裁判で認められただけでも、加藤元社長から5人に対し、2000万円から5億円という額の融資が実行されている。ところが、暴力団ともかかわりのある人物ばかりで、ほとんどが焦げついてしまった。加藤元社長から責任追及された吉岡被告はその代償として、インサイダー情報を流し、株で大儲けさせようとしたというのが事件の構図なのです」
吉岡被告は出世頭として将来を嘱望されるエリート銀行員だったものの、裁判中に懲戒免職に追い込まれた。
■“本当に必要なのか”
エリート銀行員が転落の人生を歩むことになるこの事件について、山本地方創生相はなぜか、国会質問をしている。
それは、SESCの調査の渦中、12年3月5日に開かれた衆院予算委員会第一分科会でのことだった。
まず、
〈(略)少し個別の案件の話をさせてもらいたいと思うんですが、最初に、証券取引等監視委員会の問題であります〉
と切り出し、
〈実は、インサイダー取引の嫌疑がかけられた事件がありまして、嫌疑者は民間の金融関係の会社の社長さんだということでありますが、その情報伝達者として、ある証券会社の部長さんが、Aさんといいますが、その会社の社長さんと同時に強制調査を受けて、今も参考人という立場だと思いますけれども、調査の対象になっているわけであります〉
と言及した。
さらに、
〈たまたま、この部長さんは私の知人でありまして、そういうインサイダー取引の可能性があるのならしようがないじゃないかと言ったら、いや、自分は全く身に覚えがない、社長さんの株取引なんて一切知らないし、金銭の授受も一円もないということでありまして、それならそれで堂々と闘えばいいじゃないかということでやっているわけでありますが、いつまでたっても結論が出ない、これが私は大問題だと思っております〉
要するに、“私の知人”である吉岡被告に対するSESCの調査を問題視しているのである。
〈九月に始まってもう六カ月目に入ってきているわけでありますけれども、情報伝達したかどうかというのは、そんなものは私の感覚でいうと、一カ月もあればいろいろなパソコンとか書類とかを見て証拠があるかどうかわかるはずでありまして、結局、そういう確証がつかめない、その結果、何とか本人の自白に持っていきたいということなんでしょう〉
〈私は、こういう調査のやり方しかできない監視委員会というのはある意味で本当に必要なのかなというようにも思ってきていまして(略)嫌疑者の会社社長に対しては、パスポートなんか返して、彼は海外に旅行もしているんですよ。(略)しかし、監督下の証券会社の社員だけは週に二回呼んで、余り関係のない話ばかりして(略)これから私は監視委員会のあり方についてじっくり検討していきたいと思っています〉
SESCの存在意義にさえも、疑問を投げかけているのだ。
■“知人”を超えた関係
それに対し、SESCを所管する自見庄三郎金融相(当時)の答弁は、
〈(略)あらゆる選択肢を排除することなく、金融庁、証券取引等監視委員会、総力を挙げて、市場の公正性、透明性の確保に努めてまいりたいというふうに思っております〉
と当たり障りのないものだった。
すると、
〈監視委員会の軽重が問われているのは、嫌疑者でもない情報伝達者みたいな話については毎週二回も呼んでぎりぎり聞いている。結果は全然出ない、確証も出せない(略)私は、この監視委員会は明らかに組織上のガバナンスの問題があるというふうに思わざるを得ない〉
と畳み掛けている。
よほど、SESCがお気に召さない様子なのである。
なぜ、これほどまでに山本地方創生相は“日興インサイダー事件”にこだわったのか。
実を言えば、吉岡被告とは、単なる“私の知人”という関係ではなかったのである。
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特集「『安倍内閣』と『金融犯罪グループ』の接点 『インサイダー』捜査中止を企てた『山本幸三』地方創生大臣の国会質問」より
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