バド「タカマツペア」 金メダル獲得は性格の不一致が幸い

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「原因は性格の不一致です」。芸能人の離婚会見でよく耳にするこの破局理由。一般の世界でも幸せな結婚生活が壊れる原因のナンバー1だ。もっともバドミントンのダブルス戦の世界ではこれが武器になるという。奇跡の逆転劇で金メダルを獲得した「タカマツペア」も正反対の性格が幸いした。

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時速400キロのスマッシュも(イメージ)

 1ゲームずつを取り合って迎えた最終第3ゲーム。16対19でデンマークペアに「あと2点で敗北」という逆境に追い詰められた高橋礼華(あやか)(26)と松友美佐紀(24)はそこから底力を発揮した。

「経験則で言えば、あの時点で6割は負けです」

 とは、彼女らが所属する日本ユニシスの小宮山元(はじめ)・女子チーム監督だ。

「あの状況から松友が広角にシャトル(羽根)を散らして相手を動かし、高橋が得意のスマッシュでポイントを奪い返した。5ポイント連取で逆転したわけですが、長年、プレーを見てきた自分ですら、あの驚異の集中力には息をのみました」

 2人は宮城の聖ウルスラ学院英智高校時代の先輩後輩。この頃からもう10年近くペアを組んでいる。高校の関係者が明かす。

「彼女たちが高校1、2年の時、コーチが有力選手からペアを決めていったところ、最後に残ったのがあの2人だった。両方ともシングルスの選手でしたが、選手強化の過程で、ダブルスを組ませられた。余り物の2人だったんです」

 この点、同校の田所光男総監督は補足する。

「シングルスの予定の2人を組ませたら、強くなったということ。確かに当時、タカマツより強力なペアがいて、彼女たちにはダブルスとしては期待していなかったことは事実ですが……」

 先の関係者によれば、最強ペア誕生の要素として、2人の性格が真逆だった点も見逃せないという。

「高橋は明るく、活発。松友はいつもひょうひょうとして冷静でマイペース。趣味が違い過ぎ、一緒に買い物にも出かけないと言っていた。松友がゲームをコントロールし、高橋が時速400キロのスマッシュでポイントをゲットする。その役割分担が徹底されるには、性格が不一致な方が良い」

■スタミナ源はナマコ

 加えて松友はラケットを操る感覚が研ぎ澄まされているという。開発担当者の松沢猛氏が解説する。

「美佐紀の売りは狙った場所にシャトルを落とす能力。ラケットの重さを0.1グラムいじっても、“なんか違う”と気づくほど感覚が繊細です。究極のコントロールを求め、“なんか違う”のリクエストに応え、チューニングを繰り返した結果、試作品数は100本を軽く超えた。そのうちの1本が今回、使用したものです」

 とはいえ、高橋に比べ小柄な松友のスタミナはどこから来るのか。その秘密については、郷里の徳島県藍住(あいずみ)町の祖母、日高春子さんがこう明かしてくれた。

「ああ見えて、負けず嫌い。何でも一番にならないと気が済まないんです。小学校の頃からマラソンも一番、中1か2年の時には、勉強でもオール5を取っていました。高橋さんとは彼女のバドミントンチームが徳島に遠征した時に知り合った」

 以来、松友は高橋と文通を続け、彼女の後を追うように、聖ウルスラ高や日本ユニシスに進んだわけだ。

「そういえば、小学生の頃、高橋さんにバドミントンで負けて、泣いているビデオがありましたね」(同)

 それほど負けん気が強いということだろう。そしてもう一つのパワーの源は、

「ナマコです。高校時代から田舎に帰ってくると、“ナマコの三杯酢が食べたい”と言い出した」(同)

 ナマコには、ビタミンE、B群が多く、カルシウム、鉄、亜鉛などのミネラルも豊富。滋養強壮に役立ち、“海の朝鮮人参”と言われる。一枚の金メダルの裏には様々な勝因が隠されている。

「ワイド特集 『メダル』の夢の後始末」より

週刊新潮 2016年9月1日号掲載

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