NHK「貧困女子高生」騒動 テーマが軽視されかねず

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 我が国には五輪で活躍する若者がいる一方、親の事情で夢を実現できない若者もいる――。時節柄、そんなメッセージを伝えたかったに違いない。しかし、裏目に出てしまった。

NHK本社ビル

 8月18日の「NHKニュース7」で放映された子供の貧困についての報道を巡り、騒動が起こっている。

 文化部記者の話。

「放送ではまず、横浜市で開かれた若者の貧困を考えるイベントを紹介。その中で、家庭が貧困で進学を諦めざるを得ないという女子高生、うららさんが登壇し、自身を含め多くの子供が貧困に苦しんでいる現状を訴えました」

 その後、VTRはうららさんの自室でのインタビューに変わる。そこで彼女は、パソコンを買うことができず1000円のキーボードで練習していることや、部屋に冷房がないため夏場は保冷剤を首に巻いてやり過ごすといった“困窮ぶり”を語った。

「その映像に映り込んでいた自室の本棚には、彼女が好きだという漫画本やアニメのDVDがずらりと並び、さらに机上には1万円以上するイラスト用のペンも置いてあった。それらに気付いた複数の視聴者が『彼女は貧困ではないのではないか』と、ネットを中心に騒ぎ始めたのです」(同)

 騒動は瞬く間に広がり、放送を見ていた片山さつき参議院議員の耳にも入った。

 政治部記者が言う。

「片山さんは当初、彼女の窮状を救いたい一心で、返済義務の発生しない奨学金を活用することはできないかと考えていたのですが、疑義が生じると、放送内容の真偽をNHKに問い質し、回答をツイッターで公表しました」

 放送ジャーナリストが嘆息する。

「困窮の実態はともかく、あの部屋はたしかに、趣味にお金を使える人の部屋。これでは放送の意図とは裏腹に、子供の貧困問題という重大なテーマが軽視される事態にも発展しかねない。映像を見た人がどんな印象を持つか、もっと考えるべきだったのでは」

 貧困なのは作り手側の想像力だったのだ。

週刊新潮 2016年9月1日号掲載

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