愛称は“空飛ぶお尻” 世界最大の飛行船の使い道

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「EU離脱」国民投票の余波に揺れる英国が“お尻”に熱い視線を注いでいる。念のため申し添えれば“お尻(bum)”であって“臀部(buttocks)”でなく、断じて“ケツ(ass)”などではない。8月17日、処女飛行に成功したHybrid Air Vehicles(HAV)社の超巨大飛行船、エアランダー10の愛称が“空飛ぶお尻(フライング・バム)”なのである。

“お尻”の下に操縦席

「独特の形状から愛称の理由も一目瞭然ですが、全長92メートル、幅43・5メートルの機体は世界最大。史上初の総2階建て旅客機エアバスA380も巨大で有名ですが、それでも全長は73メートル。もはやサッカー場が空に浮かんでいるサイズですよ」(航空ジャーナリスト)

 最高速度160キロ、最大積載量10トン、最高高度4880メートルという数値はジェット機に較べれば見劣りするが、水面、砂漠、雪原でも離着陸できる。巨体に溜め込んだヘリウムガスの浮力で有人で5日間、無人なら2週間以上、空中に留まることが可能だという。

「消費燃料も圧倒的に少なくて済みますし音も静か。なにより、安い。A380など1機400億円もしますが、その10分の1以下です。HAV社は5年後に100機稼働の予定と言いますが、豪華客室を備えての遊覧飛行や僻地への貨物輸送など確かに用途は広い」(同)

 だが各国の軍も興味を示しており、軍事利用が50%近くに上るとの見方もある。

 軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏は言う。

「そもそもはLEMVと呼ばれ、米軍が開発していた機体。3億ドル(約300億円)が注ぎ込まれましたが予算減で断念したのです。ゲリラの監視や通信傍受、味方部隊の通信中継などが主目的だったはずです」

 アフガニスタンで実証実験が行われる寸前まで開発は進んでいたが、中断。英政府の支援の下、HAV社が完成させたというわけだ。

「高高度対空ミサイルや戦闘機を持つ正規軍はともかく、占領地やゲリラ相手なら監視に向いているでしょう。威圧感もある」(同)

 大きさを生かすなら、飛行船広告などで平和に利用してもらいたいものだが。

週刊新潮 2016年9月1日号掲載

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