海老名香葉子、不倫ラッシュの落語界を語る 「浮気は許してあげなさい」

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 いかに落語家といえど、“女遊びは芸の肥やし”と開き直れないのが、このご時世。桂文枝や三遊亭円楽が謝罪会見に追い込まれたことも記憶に新しいが、林家一門を仕切る海老名香葉子さん(82)は「浮気くらい許してあげなさい」と仰るのだ。落語界のゴッドマザーの言葉のウラには“亡き夫”の浮気を巡る、悲喜こもごもの人情噺があった。

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林家一門を仕切る海老名香葉子さん(82) 「いまとなっては笑い話」ですって、三平師匠

 まず、落語界の不倫ラッシュについて香葉子さんに水を向けると、

「円楽さんの奥様は、“身から出たサビも味になる”と仰ったんですって。私にはそんな洒落たことは言えませんねぇ。円楽さんがうまくセリフを作ったんじゃないの? 一方、謝罪会見の前に“がんばれ”ってメモを差し入れた文枝さんの奥様は大したものです。自分が一番つらいのに夫を励ますんだから。そもそも、“ちょっと遊ぼうよ”くらいの関係を不倫と呼んで非難するのは騒ぎ過ぎなんです。浮気された妻が怒るのは当たり前ですけど、ずるずると引きずって夫を追い詰めたらダメ。卑屈になって夫を愛せなくなります」

 そう語る香葉子さん自身、初代・林家三平師匠の浮気には幾度となく泣かされた過去がある。

 2人が結婚したのは戦後間もない昭和27年のこと。夫は当時26歳、妻は18歳だった。

 その翌年には、めでたく長女の美どりが生まれたのだが、

「まだ赤ん坊だった美どりをおぶって築地の姉に会いに行こうとしたら、数寄屋橋で夫と出くわしたんです。髪の長い、綺麗な格好をした女性を隣に連れていてね。こっちは内職ばかりでお化粧もぞんざいだし、いつも同じ洋服を着回していたから怒り心頭です。でも、そんな私に夫は“あっ、こんにちは”と言ったんです。私もつられて“こんにちは……”。呆気にとられているうち2人は雑踏の中に消えちゃった。あまりに腹が立って有楽町の甘味処『おかめ』で、おしるこやあんみつをヤケ食いしました。家に帰って姑に打ち明けたら“とっちめておやり!”。夫は“二度としません!”と平謝りでした」

■「お先に失礼します!」

 だが、案の定、夫の浮気の虫は収まらず、

「知り合いからチケットをもらって森繁久彌さんが主演する映画を観に行った時のこと。前の席に仲の良さそうなカップルが座ったんですが、よくよく見たら夫でした。私が傘の柄で夫の肩を叩くと、“お先に失礼します!”と言ってそそくさと出て行きましたよ」

 このエピソードには、上映されていた作品がよりによって「夫婦善哉」だったというオチまでついてくる。

 さらに、

「真打に昇進する頃、夫に女がいることが分かりました。彼女の立派なマンションに乗り込んだら、夫のお気に入りの高座用の座布団や浴衣が置いてある。悔しさをこらえて“主人がお世話になりまして”とだけ言いました。結局、夫とは別れてくれたんですが、まだ女性がひとりで生きていくのは大変な時代だったから、何度か彼女に生活費を渡しに行きました。正直、夫の浮気相手は美人ばかり。でも、優越感もありました。“こんな美人に惚れられる夫の本妻は私なのよ”というね」 

 そんな三平師匠だが、次女の泰葉、さらに長男の正蔵が生まれると朝帰りをしなくなったという。

「その頃から急に家族想いになったんです。私が心筋梗塞で入院した時も、夫は誰より心配して毎日、お見舞いに来てくれた。散々遊んだ夫だけど、亡くなるまでに何倍も大事にしてくれました。いまではどの浮気も懐かしい思い出ですよ。一時の感情で大事な人を失ってしまうのは、本当に惜しいことだと思います」

 ひと夏の情事が奥方にバレそうな向きには、三平師匠の名セリフ「どうもスイマセン!」をお勧めしたい。

「ワイド特集 鉄の女の『金』『銀』『銅』」より

週刊新潮 2016年8月11・18日夏季特大号掲載

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