【相模原殺傷】植松容疑者に該当する無差別大量殺人犯「6つの要因」

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障害者福祉施設「津久井やまゆり園」で入所者45人を殺傷した植松聖(26)(写真はフェイスブックより)

〈ヒトラーの思想が2週間前に降りてきた〉

 7月26日未明、相模原市にある障害者福祉施設「津久井やまゆり園」で入所者45人を殺傷した植松聖(26)は、今年2月に緊急措置入院させられた際、医師にこう話していた。

 その直前、大島理森衆院議長に宛て、知的障害者の大量殺害を予告する手紙を渡していたのはすでに報じられた通り。書面で植松は、

〈逮捕後の監禁は最長で2年までとし、その後は自由な人生を送らせて下さい。心神喪失による無罪。新しい名前(伊黒崇)本籍、運転免許証等の生活に必要な書類、美容整形による一般社会への擬態。金銭的支援5億円。これらを確約して頂ければと考えております〉

 などと、あらん限りの身勝手を書き連ねていたのだった。神奈川県警の捜査関係者が言う。

「犠牲者の遺族へは『突然のお別れをさせるようになってしまい、心から謝罪したい』などと口にする一方、相変わらず亡くなった19人に対しては何一つ謝罪や反省の言動が見られません。本人は取り調べに対して雄弁な日と黙り込む日があるなど、気分の浮き沈みが激しい。喋る時は理路整然とし、内容にブレがないため、我々も無理に喋らせようとはしていません」

 入院中の尿検査では大麻の陽性反応が出ており、「大麻精神病」「妄想性障害」などと診断されていた。

「27日の家宅捜索でも、自宅からビニール小袋に入った大麻が押収されました。0・005グラムと微量のため、使用済みの残留片だとみられています」(神奈川県警担当記者)

■6つの要因

 薬物の作用と相まって、まさに狂気に拍車がかかった格好なのだが、『無差別殺人の精神分析』(新潮社刊)の著者である精神科医の片田珠美氏に聞くと、

「米国の犯罪学者であるレヴィンとフォックスによれば、今回のような典型的な無差別大量殺人の犯人には6つの要因があるとされています」

 というのだ。

「その1つ目として、まず『長期間にわたる欲求不満』が挙げられます。今回の容疑者は身近な人に職場の不満を述べていたとのことで該当します。2つ目は『他責的傾向』。人生がうまくいかないのを他人のせいにし、責任転嫁しようとするのです。彼もまた施設を恨み、職員を恨み、そして入所者である障害者までと、その傾向は顕著にみられます。『自分だけが理不尽な扱いを受けている』といった被害妄想があった可能性も、大いにあります」

 さもなくば、犯行予告をしたためた手紙を堂々と手渡せるはずなどない。そして3つ目は、

「『破滅的な喪失』というもの。すなわち、ある種の喪失体験をした際に『自分は破滅した』と受け止めてしまうのです。彼の場合は失職、さらには2月の措置入院が重要な出来事にあたります。自傷他害のおそれがある人を、警察を経由して都道府県知事の命令で入院させる手続きですが、一方で彼は常々『障害者は死ねばいい』と言い放ち、侮蔑の対象として見ていた。そんな自身が、強制的な入院を余儀なくされてしまったわけです。これを境に自分が精神障害者となり、それまで忌み嫌ってきた知的障害者と同じカテゴリーになってしまった、との念を抱くに至ったのではないでしょうか」

■残る3つは…

 さらに続けて、

「『外部のきっかけ(コピーキャット)』が4つ目。これは先行する無差別大量殺人の模倣という意味です。例えば、加藤智大死刑囚による秋葉原通り魔事件は2008年6月に発生しましたが、その直前の3月には、茨城の土浦市でも刃物を用いた大量殺傷が起きています」

 としながら、

「今回の場合、最近欧米で多発しているテロを模倣した可能性は非常に高い。実際、彼のツイッターには、事件3日前の7月23日、ドイツ・ミュンヘンのマクドナルドでの銃乱射事件について触れた箇所があります」

〈同時刻にドイツで銃乱射。玩具なら楽しいのに〉(植松聖のツイッターより)

 その数日前には、フランスのニースで「トラック突入テロ」が起きたのはご存じの通り。社会への不満に起因する大量殺人に触発されたおそれは否めない。加えて、

「5つ目に『社会的心理的な孤立』。容疑者も一人暮らしで、失職して職場との繋がりも失っていました。そして最後が『大量破壊のための武器入手』。今回、刃物の入手はたやすかったと思われます」

 6つの要因すべてに該当する植松は、まさしく“選りすぐりの殺人鬼”というわけだ。

「特集 障害者施設襲撃! 死亡19名の実名を隠した神奈川県警の『危険思想』」より

週刊新潮 2016年8月11・18日夏季特大号掲載

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