予約1万件超え「裸レストラン」の客層 合コン利用だと公然わいせつ?

エンタメ

  • ブックマーク

 7月29日に東京・港区の西麻布にオープンした、本邦初の“裸レストラン”。「Amrita(アムリタ)」と銘打たれたこの店は、ロンドンにある同コンセプトの「Bunyadi(ブンヤディ)」なる店を参考に企画されているという。ロンドンの店では客が全裸になるが、日本のこちらでは紙製の下着を着用するそう。「もちろん、脱ぎたい人はテーブル席でトップレスになって頂いても構いません」(アムリタ運営スタッフ)

 ***

90年代に人気を博した「J.men's」

 客のみならず、店員の“出で立ち”もまた、日本版の大きな特徴であろう。ロンドンでは、トップレスの女性スタッフが闊歩する光景が展開されるのに対し、

「アムリタは全員が男性スタッフ。しかも筋骨隆々の外国人揃いです」(同)

 というのだ。

「実は今回、90年代に男性ストリップで一世を風靡した『J.men's TOKYO』のコンセプトを取り入れています。当時の人気ダンサーや振付師らに声を掛け、J.men'sの再現をイメージして企画が動き出したのです」

 かつて同店も西麻布の地にあり、外国人ダンサー目当ての女性客で連日大賑わい。鍛えられた肢体に張り付いたビキニパンツにチップを挟むたび、嬌声が響き渡った。アムリタでは外国人男性が、Gストリングと呼ばれる「紐パンツ」を穿いて接客。これと並行して、ホワイトカフに黒のボウタイ姿のダンサーらによるショーも開催するのだとか。

■「合コン」は要注意

 ともあれ、オープン前の時点で予約は1万組を超え、内訳はまさしく色とりどり。

「男女比は男4に女6。また全体の4割が外国人です。中には、結婚記念日をサプライズで祝いたいというご夫婦も。男性では『日頃から鍛えている肉体を披露する場所を探していた』という方が多く、現にスポーツジムで筋トレに励んでいるグループ40人での貸切も入っています。女性はやはりマッチョな店員目当ての方が多く、お一人で予約された20代女性から、かつてJ.men'sの熱烈ファンだった60代後半の方まで。この方は熱意もあって、特例での入店が認められました」(同)

 今後は東京2号店、さらには名古屋や京都でも期間限定で店を構え、一気呵成に稼いだ後は、ロスでの出店を控えているというから見上げた商魂だ。

 一方で、各方面へのアプローチも遺漏なく、

「あらかじめ風営法や消防法をクリアしている営業中の店舗を、期間中だけ間借りする形をとりました。警察や保健所をはじめ、弁護士にも『法に触れないか』と事前に相談しており、その上で紙パンツなどの衣装を考案したわけです」(同)

 実際に、刑事事件に詳しい三平聡史弁護士に聞くと、

「現行の法解釈では『公然わいせつ』の定義として“性器が見えるか”というのが1つの基準になります。つまり、水着以上の格好ならば場所にかかわらず法には触れない。そしてもう1つは相手が『不特定多数』かどうかという点。極論すれば、周囲に見えない限り、個室居酒屋やカラオケボックスで男女が裸になったとしても公然わいせつには当たりません」

 従ってこのケースも、

「仕切りのある個室で全裸になり、また特定の従業員にその姿を見られてもセーフだと思います。ただし、顔見知りのグループ内ならOKですが、初対面の男女同士が紙の下着を脱いで合コンをすれば、それは不特定多数と見なされ、法に触れるおそれがあります」

■もはや「秘密クラブ」

 とはいえ、カーテン越しに隣室の艶めかしい姿態が浮かび上がれば、たちまち理性も“原始回帰”するのは必至。風俗に詳しいノンフィクションライターの深笛義也氏が言う。

「女性客の比率が多いというのは、あらためて性意識の変化を実感します。店員が目当てであっても、さらにそうした女性たちを目当てに来店する男性客がいるわけですから、これでレストランと言い切るのは、さすがに無理があるでしょう」

 念のため付言すれば、店内では他の客との会話や接触は禁じられているのだが、

「もはや『秘密クラブ』と言ってもいいでしょう」

 こう指摘するのは、風俗情報誌「俺の旅」の生駒明編集長である。

「本来ならば、身内でこっそり集まって開催するものを、会員制でもなくHPまで作っているのだから珍しい。表向きは合法でしょうが、来店動機は裸なので、いきおい不測の事態を招きかねません。大体、ただ裸になって料理を食べるにしては料金が高すぎるし、レストランと言いながらメニューの内容も示されていない。どことなく『裏風俗』になりそうな匂いもします」

 作家の岩井志麻子氏も、

「食欲も性欲もともに“3大欲求”ではありますが、何かが突出すれば他がへこむというように、この店に美味しい料理を求める人はいないと思います。また、裸を見たいだけなら自分は紙パンツになる必要はないのですから、基本的には露出好きが集うのでしょう」

 そう分析しつつ、

「街なかで人目も憚らずいちゃついているカップルで、美男美女がいた例(ためし)がありませんが、ここでは本当に体にも自信のある男女のいちゃつきが拝めそうですね。それにしても、裸になってしまえば金も学歴も地位も関係なく、ただ立派かどうかだけ。果たして人は平等なのか否か、つくづく考えさせられてしまいます」

 人類の営みと、とことん向き合う破目になりそうだ。

「特集 予約1万組! 西麻布『裸のレストラン』お楽しみガイド」より

週刊新潮 2016年8月4日号掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。