「大分鶏にいた丼」「コンコンコロッケ」全国の個性的な給食の数々…“甲子園”開催も 豪華すぎる学校給食のメニュー一覧(3)

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 かつては不味い食事の代名詞のように言われていた学校給食が、今、劇的なまでに美味しくなっているという。例えば、日本一美味しい給食を目指す東京都足立区では、区の特産の小松菜を使った「こまつなのキーマカレー」やインド料理の「足立なサモサ」などのメニューを提供。つかう出汁はすべて天然ものだとか。ノンフィクション・ライターの白石新が紹介する、現代っ子の給食事情――。

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油揚げ使用の“コンコンコロッケ”

 もちろん、このような美味しい学校給食は、足立区ばかりのものではない。先に述べた横浜市の例(2を参照)をはじめとして、全国に個性的で美味しい給食メニューが続々登場している。いまや、

「家庭とおなじで、学校の数だけ給食があるという状況になった」(学校給食研究家でジャーナリストの吉原ひろこ氏)

 というのである。それも学校や地域ごとに、味だけでなくコンセプトまではっきりと打ち出した献立が次々にうまれている。大分県では、Jリーグに所属する地元サッカーチーム「大分トリニータ」を応援する意味をこめて、「大分鶏にいた丼」と呼ばれるメニューが開発された。これは地元特産の鶏とニラをつかった丼ものである。

「また、長野県塩尻市では子どもたちが献立の開発にたずさわっていて、そうしてできたものの一つが“コンコンコロッケ”です。地元の民話に登場するキツネをヒントに、中学生が考案しました。パン粉の衣のかわりに油揚げをつかったコロッケで、評判が高く、全国的にも知られるようになりました」(同)

■大人が一杯やりたくなる

 全国の学校給食は、このように底上げがめざましいのだが、それに一役買っているのが、農水省が平成20(2008)年からおこなっている「地産地消給食等メニューコンテスト」である。

 そこで昨年度、文部科学大臣賞を受賞したのは、福井県の越前町立朝日学校給食センターだった。表彰されたメニューの名は「100%地場産『えち膳の日』献立」。駄洒落はご愛嬌だが、その中身は読むだけでよだれが出てきそうだ。福井県は油揚げが名産で消費量も多いが、その生揚げをつかった「にゅうカレー」を中心に、地元の「有機玄米ご飯」「イカゲソから揚げゆかり風味」「小松菜とわかめの梅肉あえ」といった料理が並ぶ。実際、それらはいますぐ街で評判の洋食店で出されそうなでき栄えである。

 ほかに、文科省や農水省が後援する「全国学校給食甲子園」と呼ばれるコンクールも、年々注目を集めるようになっている。これは全国を地域ごとのブロックにわけ、勝ち上がっていくトーナメント方式の大会で、まさに給食の「甲子園」である。決勝では各ブロックの優勝者が1時間以内に調理し、対決する。昨年、優勝したのは群馬県のみなかみ町月夜野学校給食センターで、「上州豚のアップルジンジャーソースかけ」「のり塩ポテト」「根菜のミネストローネ」など、大人でも食指が動く、一杯やりたくなるような料理が並んでいた。

 このように学校給食は、いまや美味しいのが常識になりつつあるのである。さて、子どもたちは、美味しい給食を食べて体がすこやかに育てば、さぞかし勉強にも身が入るだろうか。だが、こればかりは“美味しい”やり方は簡単にみつからないようだ。ちなみに、

「揚げパンはいまも子どもたちに大人気。これは永遠のようです」(横浜市の給食関係者)

 給食は進化しても、案外、子どもたちの味覚は、それほど変わっていないのかもしれない。

「特別読物 ズワイガニから松阪牛まで! 豪華すぎる学校給食のメニュー一覧――白石新(ノンフィクション・ライター)」より

白石 新(しらいし・しん)
1971年、東京生まれ。一橋大学法学部卒。出版社勤務を経てフリーライターに。社会問題、食、モノなど幅広く執筆。別名義、加藤ジャンプでも活動し、著書多数。近著に漫画『今夜はコの字で』(原作)。

週刊新潮 2016年7月14日号掲載

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