中国人女性と結婚、実はバツ2で「騙された…」 爆増する「在留中国人」の裏技(2)

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中国人にとって日本はお金を稼げるという点で魅力的

 80万人を超えるのは時間の問題であるという「中国人在留者」の実態を、ライターの前端紀嬉氏がレポートする。滞在期間と就労活動に制限のない「永住」、母国の国籍を捨てる「帰化」、ともに資格取得には一定期間の日本の居住歴が求められる。しかし、そこには“結婚”を利用した抜け道が……。

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 在留資格や帰化申請のサポートをする行政書士は、

「やはり、中国人にとって日本はお金を稼げるという点で魅力的です」

 と言い、こう説明する。

「富裕層や非常に専門性の高い知識や技術を持つ人材は別にして、中間層以下が稼ごうとするなら、日本のほうがカネ儲けはしやすい。だが、圧倒的に多いのは学歴も職歴も金もない人で、日本に入る手立てがない。そういう人は身一つで日本に入れる日本人との結婚に目を付ける。偽装結婚も一向になくなりません」

 前回にも述べたように、日本人や永住者と結婚して、「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の在留資格を手に入れれば、無条件で来日できる。帰化や永住の申請も、日本での滞在期間の要件がぐっと縮まる。

■初婚のはずが…

年の差が大きく開いた日本人男性と中国人女性のカップルは偽装結婚が疑われやすい

 商社に勤める鈴木剛さん(50)=仮名=は、北京駐在時代、取引先の代表から紹介された18歳年下の女性と結婚した。

「今思えば、騙されたんでしょうね」

 と、鈴木さんは述懐する。

「彼女は、父親は解放軍付きの医者、母親は中学教師という家庭に育ち、おしとやかな人でした。そういうところに惹かれましたが、結婚した途端、態度が豹変し、『バカ野郎』『うるさい』という言葉も使うようになった。しかも、初婚だと聞いていたのに、実はバツ2だったんです」

 2年の駐在を終え、帰国したが、

「彼女は日本語が下手なので、なかなか仕事が見つかりません。すると、駄々っ子のように足をバタつかせ、私に『仕事探せ~』と怒鳴り散らすことも。私もさすがに嫌気がさして、離婚を切り出しました」

 このとき、結婚して3年、帰国して1年が過ぎようとしていた。

「永住権が欲しいというので、在留資格を『日本人の配偶者等』から、『永住者』に変更してあげた。実は彼女の姉も日本人と結婚して山梨に住んでいた。その姉と暮らしたい、と。彼女は元々、親とは折り合いが悪く、中国には帰りたくないと言っていました」

 年の差が大きく開いた日本人男性と中国人女性のカップルは偽装結婚が疑われやすいというが、自然な出会いから結婚に至っても、男のほうだけが舞い上がっているケースも少なくない。純粋な気持ちを巧みに操る中国人女性の、まさに体を張った大ばくちである。

■3回の申請を却下された女

 さて、金で割り切った偽装結婚に加担する日本人の多くは、結婚願望などないが借金を抱えているといった単なる金目当ての男だ。国内外のブローカーの手引きで引き合わされた中国の女は、商談が成立し、配偶者資格を取ると、ほとんどは夜の世界に染まっていく。「配偶者等」の在留資格に、就労職種の制限はない。

 先の行政書士は、永住や帰化の申請を希望する中国人から相談されると、当然ながら理由を聞く。普通は、「日本人になって信頼を高め、ビジネスで成功したい」とか、誰もが納得することを言うものだ。ところが、「帰化すれば、捕まっても強制退去させられない」、「家族を日本に呼んで一緒に暮らしたいから」といったあからさまなことを言う者も珍しくない。

 日本人男性と偽装結婚し、4、5年して永住者の資格を取ったら離婚。その後、中国人の“本命の男”と再婚し、芋づる式に家族を呼び寄せるのがお決まりのパターンである。

 2年前に、30歳になる中国人の女から依頼された案件は、なかなか興味深かったという。行政書士が呆れて話す。

「彼女は20歳のときに60歳の日本人と結婚して来日し、27歳で離婚。永住資格を持っていた。その後、中国にいる男と再婚、彼との間に娘が2人いるので、中国人の夫と子供を日本に呼んで一緒に暮らそうと考えました。ところが、よくよく聞くと、私に依頼に来た時、中国にいる長女はすでに8歳だというのです。つまり、前夫と婚姻関係にあった22歳のときに再婚相手の中国人との子供を生んだことになる。一緒に暮らしていたら普通、日本人の夫は女房の体の変化に気付くはずなのに。気付かれなかったと言っていましたね」

 つまり彼女は、日本人男性と結婚している間に本命男との子を出産したため、前の結婚が偽装である疑いが生じたのだ。彼女は行政書士に依頼する前に、自ら中国人夫に「永住者の配偶者等」の在留資格が出るよう2度入管に申請したが、いずれも却下されていた。そこで行政書士に相談したわけだが、

「戸籍上、婚姻関係が成立し、書類上問題もなく、平穏に暮らしていれば、入管も面接で『旦那さんと生活していますか?』なんて聞きません。目に見えないことは入管も指摘できない。が、再婚相手との子の件はどう考えても不自然です。前は見えなかった偽装結婚の疑惑が新たな申請で見えてきた。入管からは、確実にマークされる。3度目の申請も却下されました」(同)

 入管も偽装結婚を見抜くために、あの手この手を駆使している。だが、プライバシーとの兼ね合いで、調査には限界がある。

■「家族滞在」の資格で…

 3度入管に申請を却下されたこの中国人女性とその家族はどうなったのか。行政書士が続ける。

「中国人女性とは別に、再婚相手の中国人男性が単独で会社を作り代表取締役となって経営するのであれば、当時の『投資・経営』の在留資格は下りる可能性があった。そうすれば日本に入って来られます」

 今は「経営・管理」に変わった「投資・経営」は、住居とは別の独立した事務所を持ち、日本人や永住者を2人以上雇う、あるいは年間500万円以上を投資するというのが主な要件。学歴要件はなく、事業を行う能力があることを客観的に示せばよかったという。

 この行政書士は、その後、風の便りに、再婚相手の中国人男性が「投資・経営」の在留資格を申請したことを知った。取得できれば、子供らも「家族滞在」の資格で来日が可能となる。

(3)へつづく

(1)はこちら

「特別読物 今や80万人! 爆増する『在留中国人』の裏技――前端紀嬉(ライター)」より

前端紀嬉(まえはた・のりこ)
1965年生まれ。中央大学中退後、映像、音楽制作会社を経てフリーライターに。北京に留学経験があり、中国事情に精通している。

週刊新潮 2016年6月23日号掲載

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