桃井かおり監督作公開 自身も娼婦役で出演
もはや国際俳優、いや国際的映画監督の趣き。
今年2月のベルリン国際映画祭では、主演したドイツ映画『フクシマ、モナムール』がハイナー・カーロウ賞と国際アートシアター連盟賞に輝き、監督した『火 Hee』も同映画祭で初上映された、桃井かおり監督(65)だ。
その『火~』が8月20日より全国順次公開される。
「国際映画祭など海外の評価が想像以上に高い」
とは『火~』でプロデューサーを務めた奥山和由氏。
「原作は芥川賞作家の中村文則の『火』で、火に異常に執着する精神疾患をもつ娼婦が精神科医に半生を語る、というもの。ト書きのない全て一人称で語られる狂気の小説。この主演を彼女に依頼するときに監督もやってもらおうと考えていた。桃井かおりを野放しにして、実物を棚卸しすれば、狂気は出来上がると思った。期待通り、自由表現の満喫度は最高です」(同)
作品を見た映画評論家の北川れい子氏は、
「桃井かおり“全開”の独り語りで、それが真実か妄想かも分からない。実在した横浜の“メリーさん”を彷彿させるような娼婦役。彼女の場合、演技云々ではなく、自分を切り札にして演じるている。そういう役者がいなくなっている中、カッコいいですよ」
低予算のため、米ロサンゼルスの自宅をスタジオに、リハーサル、撮り直しなし、10日で撮影されたという。
「最初の編集を見て、桃井かおりは良いけど相手の精神科医がダメだから撮り直してくれ、と注文を付けた。それが国際電話で伝言になっちゃって、『撮り直せ』だけが彼女に伝わって、ぶち切れられたっけ。本人に事情を説明したら『私もそう思ったのよ』って納得して、完璧になった。ストーリーの軸をつかんでいるから一言言えば直ってくる。ビートたけしが監督・主演した『その男、凶暴につき』で世界の北野になった頃を思い出しましたよ」(奥山氏)
さらに俳優・桃井かおりには、年内公開予定のラトビア出身監督の『魔法の着物』、メキシコ映画『The Room』も控えている。