天皇陛下は“安倍総理嫌い”の護憲派?〈生前退位の大疑問〉

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 閑吟集に、「思ひ出すとは忘るるか 思ひ出さずや忘れねば」とある。忘れたから思い出す、忘れないのだから思い出すはずがない。そんな逆説を孕んだ意味合いだが、天皇陛下はことに反戦・護憲に対し、並々ならぬ思いがおありで、お忘れになることなど片時もないようなのだ。

 それが証拠に、傘寿を迎えられた2013年の誕生日に際しては、

「戦後、連合国軍の占領下にあった日本は、平和と民主主義を、守るべき大切なものとして、日本国憲法を作り、様々な改革を行って、今日の日本を築きました」

 とご発言。そして、

「また、当時の知日派の米国人の協力も忘れてはならないことと思います」

 と続けられたのだった。

 このお気持ちは、皇后陛下も同様でいらっしゃる。

 その2カ月前、自身の誕生日の折に、明治憲法の公布前に民間有志が起草した「五日市憲法草案」をご紹介。基本的人権の尊重や法の下の平等など、現行憲法につながる内容が記された「世界でも珍しい文化遺産」と評価されている。

 更に1995年には、

 初夏(はつなつ)の光の中に苗木植うるこの子どもらに戦あらすな

 こう詠まれたこともある。

「陛下が皇室の将来を心配されてきたのは間違いありません」

 とは、さる宮内庁関係者。

「だから、民主党の野田政権時代に検討されていた『女性宮家』の創設について、期するところがあった。しかし、12年11月の解散後に安倍政権が発足してからというもの、論議は下火になってしまった。いわば卓袱台返しのような安倍さんの振舞いに対し、陛下自身、ご懸念を周囲に示されたといいます。その後の官邸・皇室間の距離などに鑑みると、陛下は安倍さんのことがお好きでないのかもしれません」

 ところで今回、官邸は虚を突かれたわけではない。「生前退位」のご意向や、それをNHKが報じることを事前に察知してはいた。もっとも総理周辺によると、

「皇室典範ひとつとっても、正解がない。時間がかかるかも知れないし、結果的に改憲論議に水を差しかねない問題だ」

 衆参両院で改憲勢力3分の2を得た折も折、新たに顕在化した課題について、戸惑いを隠さないのだった。

「特集 『天皇陛下』生前退位に12の大疑問」より

週刊新潮 2016年7月28日号掲載

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