英国離脱にほくそ笑む、独メルケル首相の本音 混乱続くEU離脱の疑問(7)

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渋面「メルケル首相」が陰でこっそりほくそ笑む?

「良いとこどりは許されません!」

 国民投票を受けた6月28日のEU首脳会議前。ドイツのメルケル首相はそう叫びながら、苦りきった表情を浮かべていたという。

 離脱ドミノを防ぐためには、イギリスに強い態度で臨まざるを得ない。だが、事が長引けば、逆に各国に巣くう離脱派を伸長させかねない。EUの実質的なトップとして、難しいかじ取りを迫られているのだ。

 もっとも、

「大きな流れで見れば、メルケルは英国離脱で得をすると言えるでしょう」

 とは、防衛大学校の佐瀬昌盛名誉教授(国際政治)。

「EUの『優等生』であるドイツに対し、イギリスは『不良学生』でした。ポンドも捨てない、EUの政策にも従わない。そんな反抗的態度をとってきた悪ガキがいなくなって、メルケルはよりEUを統治しやすくなったと言えるのです」

 在仏ジャーナリストで『EU騒乱』の著者・広岡裕児氏も言う。

「『英国リベート』という制度があります。加盟各国はEUに拠出金を支払い、補助金を受け取る。豊かなイギリスは負担が重く、差額は赤ですが、それを80年代、サッチャーが“返せ!”と要求し、赤字の3分の2の返還を勝ち取りました。その原資はドイツなどの他の国々が支払っているのです」

 だからドイツの本音は“むしろせいせいした”といったところではなかろうか。

「今後、メルケルは一強体制を築き、さらにドイツ主導のEUを作り上げていく」(佐瀬名誉教授)

 ヨーロッパの皇帝へ――。陰でこっそりほくそ笑む、そんな姿が目に浮かぶのだ。

「特集 まだまだ大混乱! 英国『EU離脱』7つの疑問」より

週刊新潮 2016年7月14日号掲載

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