小池百合子は「信念や理念はないが、機を見るに敏な才能の持ち主」 元小沢側近が語る

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 これまでの勝利の方程式を覆し、“先出しジャンケン”で、小池百合子元防衛相(63)は都知事選への挑戦状を叩きつけた。一方、自民党は桜井前総務事務次官の擁立を断念した後も、“小池一本化”とはならず。あらたに、増田寛也元総務相(64)の名前が浮上してきたのだ。

「というのも、とりわけ都議会自民党が、小池さんの手順を踏まないやり方に反発したからです。加えて、小池さんが2009年の総選挙で、幸福実現党と選挙協力を行ったことを、都議会公明党と支持団体の創価学会が未だに根に持ち、都知事候補として推すことに難色を示しているのです」(自民党都連所属の国会議員)

 挙げ句、都議会自民党は、完全に増田擁立へと舵を切ったのである。

■カイロ大学への留学

 ともあれ、向う傷を怖れず、上昇志向を保ち続けられる、小池元防衛相のルーツはどこにあるのか。

 小池元防衛相と家族ぐるみの付き合いのある、親しい知人が打ち明ける。

「3年前、父親の勇二郎さんは90歳で亡くなりましたが、百合子とは“あの父にしてこの子あり”の関係でした。2人が似ているのは、努力、工夫、忍耐を怠らないところ。それと、勇二郎さんも三度の飯より政治が好きでした」

 勇二郎氏は、戦時中は海軍に身を置き、終戦後、闇市で手に入れたペニシリンを売り捌いて、大儲け。それを元手に貿易会社を立ち上げ、アラブ諸国を相手に石油輸入関連の仕事を始めた。

「たまたま、勇二郎さんは青年海外協力隊創設のためのアフリカ視察に同行し、エジプト・カイロの大都市ぶりに感動して、すぐに商売を始めることにしました。深い考えがあるわけではなく、思い立ったらすぐに行動に移してしまう。“カイロが世界の中心になる”が口癖で、百合子もカイロ大学へ留学させたのです」(同)

 47歳のときには、政治好きが高じ、自ら衆院選に立候補している。

「周囲は皆、“絶対に受かるわけがない”と反対したのですが、“一遍だけ、出させてくれ”と、頑だった。結局、選挙には惨敗し、その後、会社も倒産してしまった。それでも、めげずにカイロに渡って、日本食レストランをオープンさせたりと、決断力と行動力は並大抵ではありませんでした」(同)

 小池元防衛相の決断力と行動力は、父親譲りなのだという。

「百合子は、舛添さんが最後の登庁日となった6月20日の時点で、すでに出馬に向けたシミュレーションを始めていたみたいです。親しい周囲の者は皆、父親のときのように、百合子の都知事選出馬には反対だった。“国の外交、安保を手掛けるのが、政治家としての目標だったのではないか”と意見しても、“首都外交に挑戦したい。そのためのアイデアはある”と聞く耳は持たなかったのです」(同)

■“機を見るに敏な才能”

 一方で、現在の安倍政権において、小池元防衛相は冷遇され、孤立無援状態。政治家として活路を見出すには、都知事に転身するほかないという面もあった。

「風の流れを読む能力に優れている小池さんが、唯一失敗したのが、4年前の総裁選でした」

 と解説するのは、政治アナリストの伊藤惇夫氏だ。

「下馬評で、石破さん有利と見るなり、安倍さんを裏切った。蓋を開けてみれば、小池さんの読みは外れ、それ以降、安倍さんに冷や飯を食わされるようになりました。でも、それまでは見事な遊泳術で、時の権力者に寄り添い、政界を渡り歩いてきた。日本新党から政界デビューし、細川護熙総理が国民福祉税構想や佐川急便からの借金問題で退陣に追い込まれると、早々に、連立を組んでいた新生党の小沢一郎さんに乗り換えた。その後、新進党、自由党で行動を共にしました」

 しかし、00年には、自自公連立政権から離脱を図った自由党にも見切りをつける。

 小沢側近だった、平野貞夫元参院議員の話。

「保守党へ移ろうとする小池さんを引き留めるため、僕は大量のパーティ券の面倒を見たりもしました。最後は、小沢さんに説得役を任せ、“次の総選挙では、比例近畿ブロック1位を約束する”と直接伝えてもらった。すると、彼女から“自由党がそこで議席を取れると思いますか?”と反論された。我々にとって、最大の屈辱の言葉でした。政治的な信念や理念があるわけではないが、彼女は機を見るに敏な才能の持ち主です」

 そして、02年には、自民党へと移籍。当時、人気絶頂だった小泉純一郎総理に取り入るため、わざわざお手製の弁当を官邸に持ち込み、一時は結婚説も流れたのは、よく知られた話である。その甲斐あって、環境相に起用される。続く、第1次安倍政権では防衛相に大抜擢。ところが、閣僚のスキャンダルが相次いで内閣支持率が急落し、安倍総理が体調不良で辞任すると、“もう終わった人”と陰口を叩くようになったという。権力を失えば、見限るのも素早い。政界渡り鳥と揶揄される理由はここにある。

■“増田相乗り論”

 義理人情には欠けるものの、常に権力と添い寝してきた小池元防衛相は、首都・東京を最後の地に、決戦に挑もうとしている。 

 その行方について、政治部デスクは、

「あくまでも、民進党の岡田克也代表らは主戦論を唱えているが、肝心の候補者が見つかっていない。そのため、都連の松原仁会長などは自民党が分裂選挙に突入した場合、“増田相乗り論”もあり得ると大っぴらに公言しています。しかし、都知事選の鍵を握るのは、4割弱を占める浮動票です。自民党と民進党が相乗りしても、小池さんは勝算ありと見ているのかもしれません」

 ここは、是非とも小池元防衛相から話をうかがわねばならない。

「確かに、自民党と民進党の持っている数字を、単純に足し算すれば、私にとって厳しい結果になります。でも、選挙は、数字がそのまま出るわけではないと考えている。それよりも、相乗りとなれば、候補者はそれぞれの政党のしがらみに縛られてしまいます。そのような候補者は選挙には有利かもしれませんが、東京の将来にとっては不利になるのではないでしょうか」

 7月6日には、自民党の推薦が得られなくとも出馬することを表明。政界の渡り鳥が、最後に選んだ止まり木は、安住の地となるかどうか。

「特集 権力と添い寝した『小池百合子』元防衛相の最終目的地」より

週刊新潮 2016年7月14日号掲載

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