“インド人母子に唾”――英国でヘイトクライム激増 混乱続くEU離脱の疑問(1)

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「アフリカに帰れ!」

「このバカ、降りろ! ぶちのめしてやる!」

 マンチェスターの路面電車で、10代の少年ら3人の罵声が響いていた。

「君は何歳だ。私は君よりも長くここに住んでいる」

 移民と見られる男性に反論されると、興奮した少年は詰め寄り、ビール瓶を振り上げる。液体が辺りに飛び散った。

周りの乗客「何するの!」

男性「君は16か? ビールを離せ!」

周りの乗客「最低だわ、最低! 恥さらし!」

 国民投票の5日後に見られた光景だ。翌日、3人は逮捕されたが、こうした「ヘイトクライム」が今のイギリスでは頻発している。英国在住ライターによれば、

「投票後、国家警察のウェブサイト上への被害報告は投票前の実に5倍、331件に増えています」

 移民の拠点施設に〈ポーランド人は出ていけ!〉なる落書きが記された。レストランに「英国人ウェイターを希望。他のヨーロッパ人をテーブルに寄こさないでください」と予約が入った。インド人の母子に「出ていけ!」と男が唾を吐きかけた――などの実例が次々と表に出ているのだ。

 ロンドン在住の国際ジャーナリストで『EU崩壊』の著者・木村正人氏が言う。

「街にも『England』と書かれたTシャツを着た人が増えた気がする。今回の投票によって、今まで見えなかった人々の“深層意識”が浮き彫りになってしまったということでしょう」

「英国紳士」も崩壊の危機。

「特集 まだまだ大混乱! 英国『EU離脱』7つの疑問」より

週刊新潮 2016年7月14日号掲載

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