石田純一出馬騒動で改めて「不倫は文化」か「男の本性」かを科学的に考えてみる
川谷絵音に宮崎謙介、石井竜也にファンキー加藤、三遊亭円楽にとにかく明るい安村、乙武洋匡に荻上チキ。ミュージシャンから文化人、落語家から政治家まで、今年はとにかく「不倫」の話題が尽きません。そしてここに来て突然の都知事選出馬騒動で注目を浴びた石田純一さん。大言から断念までのフワフワした言動を眺めていると、どうしたってあの「不倫は文化」というフレーズが思い浮かびます。
この時のコメントは実際には「不倫は文化」とまで言い切ったものではなく、「不倫など忍ぶ恋から生れる文化や芸術だってあるのでは」といったものでした。そのこと自体は事実なのですが、自身の不倫について追及されている時に言ったため、「開き直ってるのか!」と反感を招いてしまったわけです。
石田さんに限らず、世間でも、「不倫は文化」とまで歯切れよくはないにせよ、「男は浮気する生き物だ。浮気は男の本能だ」といった表現をする人は珍しくありません。
こうした立場の人は、動物には一夫多妻制が多いことを根拠にしていることも多いようです。ゴリラは一夫多妻ですし、チンパンジーなどは乱婚です。
しかし、科学的に見た場合、本当にヒト(のオス)は浮気するのが当たり前であり、本能なのでしょうか。
実はそうでもないようなのです。
遺伝などのタブーに迫り、25万部のベストセラーとなっている『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(橘玲・著)の中から、この問題についての箇所を引用してみましょう(以下、同書Ⅱ-10「女性はなぜエクスタシーで叫ぶのか?」から抜粋して引用)。
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オスとメスの体格差がポイント
哺乳類の番(つがい)のつくり方には、一夫一妻制、一夫多妻制、乱婚の大きく3つがある。霊長類ではゴリラが一夫多妻、チンパンジーとボノボが乱婚、テナガザルが一夫一妻だ。
それでは、ヒトはどうなのだろう。
デズモンド・モリス(『裸のサル』)を筆頭とする標準的な理解では、ヒトは「一夫多妻に近い一夫一妻制」とされてきた。男は妻が他の男とセックスしないよう拘束する一方で、機会があれば妻以外の女性と性的関係を結ぼうとする。
それに対して女は、夫が自分と子どもを裏切って他の女に資源を投じることを警戒する。
この相互監視によって一夫一妻が人類に普遍的な婚姻関係になるが、男の欲望は可能なかぎり多くの女とセックスすることなのだから、権力を持てばまっさきにハーレムをつくろうとする。
このことは、オスとメスとの身体的特徴のちがいからも確認できる。
ゾウアザラシやトドを見ればわかるように、一夫多妻の種はハーレムをめぐってオス同士がはげしく競争し、身体が骨格の限界まで大きくなっていく。
その一方でメスにはオスをめぐる競争はないから(いったんハーレムの主になったオスは、周囲にいるメスと手当り次第に交尾する)、オスとメスの体格のちがいは大きく開いていくだろう。
霊長類ではゴリラがこのタイプで、オスの体重はメスの2倍ちかくある。
それに対して一夫一妻制ではオスも競争の必要がないから、メスと同じ体格のままのはずだ。――実際、テナガザルは雌雄でほとんど区別がつかない。
乱婚も事情は同じで、オスはゴリラのように巨大な身体を持つ必要はない。
チンパンジーやボノボのオスがメスより10~20%大きいだけなのはこのためだ。
ヒトのオスも、メスよりは大きいが顕著なちがいがあるわけではない。
このことはヒトが一夫多妻よりは一夫一妻に近い証拠だと考えられてきた。
ペニスの大きさで考える
性戦略を表わすもうひとつの身体的特徴は、男性器と睾丸の大きさだ。
成人したゴリラのオスは体重200キロ近くになるが、ペニスの長さは約3センチで睾丸は大豆ほどの大きさだ。
なぜゴリラが立派なペニスや大きな睾丸を持っていないかというと、オス同士の競争はその前に終わっていて、セックスにコストをかける必要がないからだ(ハーレムのメスと自由にセックスできるのなら、ペニスや睾丸を発達させる必要はない)。
一夫一妻でもこれは同じで、テナガザルのペニスは小さく、睾丸は身体のなかにしまいこまれている(これはゴリラも同じ)。
それに対して乱婚のボノボは、ゴリラの5分の1の体格(平均体重40キロ)にもかかわらずペニスの長さは約3倍で、睾丸にいたってはLLサイズのタマゴくらいの大きさだ。
それでは、ヒトのオスはどうなっているのだろう。
睾丸はゴリラやテナガザルよりも大きいが、ボノボやチンパンジーよりも小さい。
これもまた、ヒトの本性が一夫多妻でも乱婚でもなく一夫一妻制に近いことの証明だとされてきた。
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こういう過去の知見をもとに考えると、男性の場合、浮気がバレた際には「男の本能だ」などと開き直っても「お前はサルか」と叱られるのがオチでしょう。ひたすら謝ったほうがいいのではないでしょうか。