英国の離脱にプーチン、習近平が喜んだ理由 英国EU離脱20の疑問(15)

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 オバマ、メルケルはじめ、大国指導者が軒並み天を仰いだ「離脱」の衝撃の中で、ひそかにほくそ笑む“大物”が2人。ロシアのプーチン大統領、そして中国の習近平国家主席である。

 その「腹の底」には、何があるのか?

「プーチンは“世界経済への悪影響を最小化するよう努める”と優等生コメントを出していましたが――」

 と述べるのは、ロシアに詳しい国際問題研究家の瀧澤一郎氏だ。

「モスクワ市長はツイッターで“経済制裁が解除されるかもしれない”と呟いた。これがロシアの本音でしょう。ロシアはウクライナ問題を巡る各国の経済制裁で困窮を極め、“金はないけど頑張ってくれ!”が流行語となるほど。離脱でEUやイギリスに制裁継続の余裕がなくなり、解除が早まるのではないか、との希望的観測が広まっています」

 一方、中国とイギリスの結びつきは意外と深い。中国主導の投資銀行「AIIB」にいち早く参加を表明したのは英国だし、昨年10月には習主席が訪英し、女王にも謁見したばかりだ。

 京都大学の中西輝政名誉教授は言う。

「EUへこれまでと同じ条件で輸出を続けられなくなるイギリスは、代わりに対中輸出に力を入れる。そうなれば、習近平の思う壺です。貿易を盾にイギリスを自国の側に引き寄せれば、東、南シナ海などの問題で、これまでのように強い姿勢で臨まれることがなくなり、海洋進出の大きな足掛かりとなるでしょう」

「ならず者」国家を喜ばせた「離脱」の後遺症は、意外と重いものになりそうだ。

「特集 ヘイトと衆愚が理性にまさった? 地球的大混乱で誰が笑うか? まさかの英国『EU離脱』20の疑問」より

週刊新潮 2016年7月7日号掲載

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