鳩山由紀夫が弟の通夜で見せた光景…「これで本当に兄弟に戻れたんだな、と思いました」

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鳩山由紀夫氏

 棺に納められた弟の顔を、兄は15秒間に亘って凝視し続けた。通夜の席でのそのシーンは見る者の心を揺さぶり、様々な恩讐に彩られた兄弟の歴史を脳裏に蘇らせるものだった。

 6月21日に逝去した鳩山邦夫氏(享年67)の通夜が行われたのは、翌22日。場所は東京・文京区の護国寺桂昌殿である。

「通夜の情報は一般には公開しませんでした。それでも、生前、邦夫さんと関係が深かった方、150人くらいが参列されました」(鳩山家の関係者)

 焼香を終えた参列者が帰路についた後も桂昌殿に残っていたのは、親族と、ごく近しい関係者のみである。そのうちの1人、邦夫氏の元秘書で文京区議会議長の白石英行氏に、

「代議士(邦夫氏のこと)に会ってくれた?」

 そう声をかけたのは妻のエミリーさんだった。

「私が代議士のお顔を拝見して2、3歩退いた時のことです」

 と、白石氏は言う。

「近くに立っていた鳩山由紀夫先生がお棺をつかむような格好で身を乗り出し、目を見開いてグッと代議士の顔に近づき、15秒ほど何も言わずに見つめていたのです。それは本当に印象的な光景で、いろいろあったけれど、これで本当に兄弟に戻れたんだな、と思いましたね」

 その由紀夫氏が通夜の日に発表したコメントには、

〈弟邦夫の突然の訃報を聞いて、大変に驚いております。3年前に母が亡くなりましたが、まさかこんなに早く邦夫まで逝ってしまうとは信じられません〉

 とあったが、白石氏によれば、

「少し前から代議士の体調が良くないことは知っていました。が、そのことは身内以外に漏れないよう、秘密にされていたのです」

鳩山邦夫氏

■落ちた花びらを……

 一方、体調悪化について知らされてはいなかったものの、それとなく異変に気付いていた人もいる。

「邦夫さんが亡くなる1カ月ほど前、いつも柚子胡椒を作ってもらっているお礼に、彼の好きな今川焼きを持って鳩山邸に行った。ところが、応対した邦夫さんは以前よりずいぶん痩せてしまい、顔色も悪くて元気がない。いつもだったらかなりの時間、邦夫さんが喋るのに、その日はほとんど喋りませんでしたね」

 そう振り返るのは、邦夫氏の知人である。

「帰り際に“体には注意して下さいよ”と邦夫さんに言ったら、図星を突かれたような感じで“うん……”と頷いていたのも気になりました。また、庭まで見送りに出てきてくれた時、“鳥がさ、花の先っちょを突っつくもんだから、花びらが落ちちゃうんだよね”と言って、落ちた花びらを拾って私に見せた。その姿にも、何ともいえない寂しさを感じました」

 新聞などでは邦夫氏の死因は「十二指腸潰瘍のため」と報じられたが、

「死亡診断書には『十二指腸潰瘍の吐血によるショック死』と書いてあります」

 と、邦夫氏の事務所関係者は明かす。

「邦夫氏は死去する前日に自宅で吐血、都内の病院に救急搬送されましたが、その時はエミリーさんと普通に会話が出来ていた。しかしその後、突然、容体が急変してそのまま亡くなってしまったと聞いています」

 いずれにせよ、十二指腸潰瘍という死因に報道で触れ、首を傾げた人は多かったはず。総合内科専門医の秋津壽男氏に聞くと、

「十二指腸潰瘍は痛いし吐血もするけれど、生死には関わらない。何か他の病気があって、最後のトドメになってしまったのが、十二指腸潰瘍による出血だったということでしょう。私は、胆管がんか膵臓がんではないかと思います」

 十二指腸潰瘍で「激ヤセ」することはないという。そのことから考えても別の病を得ていた可能性が高いのだが、すでに触れた通り、その詳細は「秘密」にされていたわけである。

「特集 『鳩山邦夫』の棺を蓋いて『死因と遺産と後継者』」より

週刊新潮 2016年7月7日号掲載

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