インドの人食いライオンを銃殺できないワケ 半年で6人の死者

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 日本に“人食いツキノワグマ”が現れたかと思えば、インドでは“人食いライオン”の出現である。

 西部グジャラート州に広がるギル森林国立公園。インドで唯一、野生のライオンが生息するこの野生生物保護区の近隣の村々は、今年、次々にライオンに襲われるという恐怖に見舞われた。死者は6カ月で6人だ。

「熱波を避けて戸外で寝ていた50代の女性が襲われ、小屋で寝ていた60代の男性も犠牲に。5月下旬には屋外で寝ていた14歳の少年が複数のライオンによって食い殺され、助けようとした父親も重傷を負いました」(現地ジャーナリスト)

 当局は保護区のライオン523頭から17頭の“容疑者”を抽出し、捕獲。うち3頭の糞から人間のものと思われる毛髪を検出し、主犯格のオス1頭を動物園での“終身刑”に、オスの後に食べたと目されるメス2頭を保護施設送りに処した。

「ライオンは滅多に人など食べないんですけどねえ」

 とは、幾多のライオンと触れ合った経験のあるムツゴロウさんこと畑正憲氏だ。

「ライオンは武器を持っているなど危険と思えば人を襲ったりしませんが、眠っていたり、無害と見なせば襲うことも。内臓を好み、30人近くが食われた〈ツァボの人食いライオン〉という事件も100年以上前のケニアで起こっています」

 ムツゴロウさんによれば、インドライオンはアフリカライオンの近縁で小柄、かつては中東にも分布していたという。だが、今や絶滅危惧種に指定され、しかもこの保護区は世界唯一の生息地、おいそれと“銃殺”などできないのだ。

 だが、その保護のおかげで、近年は収容可能な数の倍近くまでライオンは増加、保護区はとっくに限界を超えていたというから――人災の可能性も高いのだ。

週刊新潮 2016年6月30日号掲載

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