舛添元都知事を調査した“第三者”弁護士はいくらで雇われたのか

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 火に油を注ぎ、そこに薪をくべ、さらに公用車用のガソリンを注(つ)ぎ足したようなものだった……。舛添氏が時間稼ぎに使った「第三者による調査」。ヤメ検弁護士に客観的な目で見てもらい違法性はなかったというシナリオで事態の鎮静化を狙ったものの、裏目に出たのは周知の通りである。端(はな)から出来レース感が漂っていたのだから当然のことなのだが、こんなお手盛り調査でも報酬は発生する。

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舛添要一元都知事とヤメ検弁護士のひとりである佐々木善三氏

「あれは第三者委員会でも何でもないですよ」

 まず、こう吐き捨てるのは弁護士の深澤直之氏だ。彼は2011年、大相撲の八百長問題を受け、日本相撲協会が第三者への調査を依頼し、組織された「特別調査委員会」のメンバーである。

「日本弁護士連合会(日弁連)のガイドラインでは、第三者委員会というものはあらゆるステークホルダー(利害関係者)のために客観的なスタンスに立って調査を行い、世間に結果を公表することになっています。そのためには、今回の場合、まず都や都議会が調査審議会のような組織を設けて、そこが外部に委託して初めて第三者委員会と言えます。ところが、舛添さん個人がヤメ検弁護士に調査を頼んでいる。結局これは『内部調査委員会』に過ぎません」(同)

 また舛添氏が「第三者」と強調し、調査にあたったヤメ検弁護士のひとりである佐々木善三氏(63)は、6月6日の会見で記者に対し、

「関係者というのは関係者ですよッ」

「そういうことをヒアリングして何の意味があるんですか? あなた、事実認定って知らないから仰(おっしゃ)るんでしょうけどねッ」

 と、逆ギレしたが、

「記者に怒ること自体が舛添さん個人に対する弁護行為そのもの。『第三者』の立場ではないことを証明してしまっています」(深澤氏)

 このように、到底、客観的な調査とは言えない代物であっても、佐々木氏には舛添氏から弁護士報酬が支払われる。一体、この評判の悪い調査で彼は幾ら手にしたのだろうか。

「日弁連のガイドラインでは、第三者委員会の報酬はタイムチャージ(時間制)が原則とされています」(同)

東京地検特捜部時代「マムシの善三」の異名を轟かせた佐々木善三氏

■無視するマムシ

 佐々木氏は東京地検特捜部時代、そのしつこさから「マムシの善三」の異名を轟(とどろ)かせたが、彼と同じく元東京地検特捜部検事で、川内原発の再稼働を巡る「九電やらせ問題」などで第三者委員会の委員を務めた郷原信郎氏が後を受ける。

「佐々木さんクラスのベテランの弁護士であれば、タイムチャージは1時間5万~6万円くらいが相場です」

 今回の調査期間は2週間だった。仮に日弁連のガイドラインを当てはめた場合、1日8時間調査したと仮定して時給6万円で48万円。それを週5日間、2週にわたって継続すると、掛ける10で、彼の報酬は480万円程度だった可能性が考えられる。

 そこで佐々木氏の事務所に尋ねると、

「調査の件では取材に応じないと本人が申しております」(事務所員)

 再び郷原氏の解説。

「第三者の弁護士が今回のような調査を引き受ける場合、中立性や客観性を認めてもらうために調査方針や氏名を事前に明らかにしておくことが望ましい。それをやらないと、『依頼者から結論ありきで受任したのではないか』と疑われてしまいます」

 にも拘(かかわ)らず、取材に対して無視を決め込んだマムシ。これだけの国民的関心事の調査を担った当事者なのに、まるで「第三者事(ひとごと)」なのだった。

「特集 今や都民1300万人の心が一つに! 白々しい言い訳はもう聞き飽きた! さよなら『舛添要一』都知事」より

週刊新潮 2016年6月23日号掲載

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