桐生祥秀が届かなかった“1000分の5秒” 日本人初の9秒台ならず

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 10秒004! 11日に行われた陸上日本学生個人選手権100メートル準決勝で桐生祥秀(20)が自己ベストを叩き出しました。

 ただし、公式記録は10秒01なんですけど……。

「技術的には更に細かい計時も可能ですが、世界共通で精度を統一する必要があるため、公式記録は百分の一秒単位になっています。千分の一秒単位の記録の公表は、同タイムで着差がある場合に限るのですが……」(日本陸連科学委員長を長年務めた阿江通良筑波大名誉教授。以下同)

 今回は彼を励ます意味で公表したのでしょうかね。

 それはさておき、実際のところ、どれだけ精度を上げることができるんですか。

「そもそも、精度を上げることに意味があるのでしょうか。陸上より速度が速いスピードスケートは、千分の一秒単位で計時していますが、ブレードの先が通過した瞬間をレーダーで正確に計測しています。一方、陸上は、人間が写真を見て胸の位置からタイムを割り出しています」

 つまり、誤差が生じやすい、と。しかも、一万分の一秒を距離に換算するとわずか1ミリ。筋肉の揺れやウェアの生地の厚みはどうするの? となるわけですね。

 まあしかし、あと0.005秒速ければ日本人初の9秒台だったのに残念!

「いいえ。千分の一秒の単位は切り上げられるので、正しくはあと0.014秒縮めないと9秒台つまり9秒99にはなりません」

 そうでしたか……。では、その可能性は?

「統計的には、1メートルの追い風が吹くと0.0671秒タイムが縮まるとされています。桐生選手はこの日、向かい風0.3メートルの決勝で10秒10。この走りを、公認ギリギリの追い風2メートルに当てはめると9秒台になるのです。ちなみに、ライバルの山縣亮太選手(24)も、5日の記録会で向かい風ながら10秒06。こちらも、同じく追い風2メートルで換算すると9秒台に相当します」

 リオ五輪代表を決める日本選手権は25日。その日はどんな風が吹くのかな?

週刊新潮 2016年6月23日号掲載

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