EU離脱が問われるイギリス 賭け屋では“離脱”の賭け金が急増

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 世界経済の明るい展望を示した――とは到底言えぬまま終幕したG7サミット。英国のEU離脱を〈深刻なリスク〉とした首脳宣言には先行きへの不安がにじむ。

「EU離脱を問う国民投票まで1カ月を切り、キャメロン首相は盛んに離脱のリスクを喧伝しています。政府は離脱が決まれば英国はすぐに景気後退に陥るとの分析を発表。財務省も物価上昇や市場の混乱の可能性を示し、年金生活者の資産は最大で48兆円失われると指摘しました」(国際部記者)

 最新の世論調査でも離脱賛成が40%に対して残留は47%に上昇。英国名物のブックメーカー(賭け屋)の一つは残留の確率を85%と過去最高の水準に引き上げた。賭け金の総額は過去最高の見通しと過熱気味なこの国民投票の趨勢は、残留へと傾いているようだ。

 英国在住のジャーナリスト、木村正人氏も言う。

「Project Fear(恐怖プロジェクト)と呼ばれる政府のキャンペーンが効を奏しつつあるのでしょう。実は英国では、若者はEU残留を望む割合が高い。他の欧州諸国に較べて若年層の失業率が低いこともあってでしょう。逆に高齢者は離脱派の割合が高い」

 境目は43歳という調査結果もあるが、老後資金が減ると脅されては高齢者も危機感を抱かざるを得ない。

「一方で、ブックメーカーでは奇妙な現象も。5月下旬の週は離脱に賭ける金額が3倍増と急激に伸び、総額が47・9%と世論調査とは逆なのです。ブックメーカー側は〈なぜこんな現象が起きているのか、まったくわからない〉と言っています」(前出記者)

 謎めいたこの現象、木村氏はこう読み解く。

「サッカー・プレミアリーグでレスターが優勝したことに関係があるのでは。レスターの優勝オッズは5001倍でした。“大穴”に賭ける人が増えたのかも」

 離脱への賭け金の平均は60ポンド(約9700円)だが、残留は平均343ポンド(約5万5000円)。“抑え”に離脱に賭ける人は増えたが、額は小さいというわけだ。

「ただ、残留に楽観視はできません。再び難民が大量流入するなど、新たな外的要因があればひっくり返ります」(同)

〈深刻なリスク〉が去ったわけではないのだ。

週刊新潮 2016年6月9日号掲載

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