“千鳥足相場”の資産防衛術はどうすべきか 「REIT」「ふるさと感謝券」「インデックスファンド」

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 梅雨を先取りするかのように、ぱっとしない相場が続いている。為替は相変わらず円高ムードで、株価も1万6000円台を上がったり下がったりの“千鳥足相場”。景気回復の予兆なのか、それとも再暴落の前触れか。来たるべき大相場に備えるための資産防衛術。

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 ヨレヨレの日経平均株価に代わって堅調なのが、内需関連だ。

 先頃、東証マザーズ指数が高値をつけたことが話題になったが、REIT(上場不動産投信)も4月に年初来高値をつけている。5月23日付けの日経新聞も1面トップで〈個人の不動産投資 活発〉と書き立てた。

 それによると、日本から海外のREITに流れた資金は1~4月で9000億円にも達し、過去最高になったという。また、国内の不動産市況が活発なことから、大手の三菱地所も投資用ワンルームマンション事業に乗り出すとある。

 この追い風に乗らない手はない、と言うのが資産デザイン研究所代表の内藤忍氏だ。

「これほどの低金利でも、ワンルームマンションはまだ4・5%の利回りが取れるのです。管理費や修繕積立金を差し引いても4%にはなる。もちろん、空室になったり家賃が下落するリスクがありますが、実は都心のマンションは入居率が9割近い。皆さんが思っているほどリスクは高くないのです」

 たとえば、サラリーマンが2000万~3000万円の退職金を手にしても定期預金だけでは年2000~3000円の収入にしかならない。

「これが、2000万円のワンルームマンションを購入して月7・5万円で貸すと年間で90万円の収入になる。東京23区内でも築10~20年の物件は2000万円あれば買える。しかも、オーナーチェンジといって入居者がいるマンションをそのまま買えば、その日から家賃が入って来ます。実際、私も母に勧めて文京区にマンションを買わせたら年108万円の家賃が入ってくるようになりました」(同)

 たしかにマンション投資は円高にも株安にも影響されない。だが、落とし穴はないのか。

「金融緩和によって株や不動産が値上がりしていることを考えると、2012年から始まったアベノミクスバブルは、明らかに終盤に入っています」

 とは経済評論家の山崎元氏。

「1990年代、バブルが崩壊したときに不動産を購入していた人は、多くが人生を狂わせてしまいました。1件の投資額が大きすぎるし、流動性も低い。そこにローンなどを組めばさらにハイリスク。株なんかよりも頭をクールにして投資しなければいけないのが不動産なのです」

 どうしても不動産というのなら、REITを少し買っておけばいいと山崎氏は警戒する。

■「朝日新聞」は批判するも…

 一方、こちらは株や不動産と違って、ノーリスク。だが、相応の地方税を納めていないといけない。いま流行の「ふるさと納税」を投資に見立てる方法だ。『100%得をするふるさと納税生活』などの著書がある金森重樹氏が言う。

「私がよく利用するのは千葉県・大多喜町(おおたきまち)で、ここに寄付すると、その6割相当の『ふるさと感謝券』がもらえます。私の昨年の年収は約7億円(註・金森氏は企業グループオーナー)で、700万円分の感謝券がもらえました」

 大多喜町は都心から車で約1時間20分。感謝券が使えるのは町内だけだが、高額商品やブランドものが買える店も出現している。たとえば、昨年、オープンした「大多喜百貨店」だ。ホームページを見ると、エルメスやカルティエ、アルマーニなどのブランドがずらり。東京の業者が出店したのだという。

「大多喜百貨店では何でも買えます。私もベントレーのホイールや、妻には460万円のピアジェを買ってあげました。お店で欲しいものを言うと、その場で見積もりを出してくれ、必要な額の感謝券を置いてくる。品物は後で送ってくるという仕組みです」(同)

 感謝券を使って大多喜町が昨年度集めた寄付金は約18億円。養老渓谷と城の観光ぐらいしかなかった街には、金券を財布にねじり込み、県外ナンバーの車が毎日のようにやってくる。金森氏も3カ月に一度、町を訪ねては、地元の酒屋でモエ・エ・シャンドンをハコ買いする。わざわざパナマで節税する必要はない。

 これに対して朝日新聞は、富裕層の節税に使われていると社説で批判したが(5月17日)、金券を贈る自治体は増える一方だ。

「本来のふるさと納税の趣旨と違うという批判は知っていますが、実際に家族と大多喜町を訪ねて、感謝券で温泉に泊まったりもしています。資産の防衛術としても選択肢に入れるのは自然なことです」(同)

■銀行が売ってくれない商品

 もっとも、これらはあくまで「裏技」。節税ではあっても運用ではない。退職金や預金をなるべく目減りさせずに、少しでも多く殖やすための、究極の防衛術はあるのか。

「それには、資産運用の基本に戻ること。まず、手元の資金を“リスクを取らない”と“リスクを取る”に分けなければなりません」

 とは先述の山崎氏。

「“リスクを取らない”運用に関して言うなら、今は一つしかない。それは『個人向け国債 変動金利10年型』を買うことです。理由は当たり前ですが、銀行預金よりも安全であること。そして、預金保険が1行当たり1000万円までなのに対して、個人国債は制限がない。また、金利も悪くありません。メガバンクの定期預金(10年定期)が約0・01%なのに対して個人向け国債は5倍の0・05%。これだけを比較しても圧倒的に国債が有利です」

 ただし、買う際に注意が必要である。銀行がなかなか売ってくれないのだ。

「個人向け国債は100万円分を売っても手数料が5000円ほどしか入らない。それよりも、購入手数料で3%、運用手数料が1・5%ほど取れる投資信託を、あの手この手で売りつけようとします。ご老人など素人のお客さんは、これらの勧誘をきっぱり断るのが一苦労です」(同)

 そして、もう一つの“リスクを取る”防衛術である。

「株式のインデックスファンドです。これを、国内と国外に分けて買う。たとえば、『TOPIX連動型上場投資信託』だと、手数料がわずか年0・1%ぐらい。投信には敏腕ファンドマネージャーが運用すると宣伝しているものもありますが、手数料が高いうえに、成績は勝ち負け半々です。“期待値”という観点から言うと、運用能力は手数料に勝てない。金融理論からすると反論の余地がありません」(同)

 国外のインデックスファンドはどうか。

「これも手数料のとにかく安いもの。『上場インデックスファンド海外先進国株式』や、購入手数料なしの『ニッセイ外国株式インデックスファンド』などは、運用手数料も年0・25%ぐらいです。これらを、国内6、海外4の割合で持ち、じっと待つのです」(同)

 株価や為替を予測するのはプロでも難しい。だが、金融商品の「良し悪し」は、相場と関係なしにはっきりしていると、山崎氏は言うのである。

「特集 日経平均が千鳥足の季節に『資産防衛ガイド』」より

週刊新潮 2016年6月2日号掲載

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