堀江貴文「教員免許は不要」勉強したくなる授業をすべき〈堀江貴文VS成毛眞「私のキュレーション術」(2)〉

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 成毛眞氏(60)の「週刊新潮」連載を単行本化した『これが「買い」だ―私のキュレーション術―』は、現代社会を生き抜くために重要な“情報を収集して選別する力”、すなわちキュレーション術を指南する一冊である。この出版を記念して行われた成毛氏と堀江貴文氏(43)の対談第1回は、データを見る力に欠けた人々の話から、“リテラシー不足”というテーマに。第2回となる今回は、それを培う“教育”の重要性を語る。

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【堀江貴文】 結局、親や学校の先生にリテラシーがないんですよ。だから、理系の教育こそ大事だと思います。にも拘らず、子供がサイエンスを嫌いになるのは、大人の教え方が下手だからですよ。

【成毛眞】 歴史や地理なんて、大人になってから本を読んだりNHKの番組を見れば学べる。まずはサイエンスを楽しく学べるようにすべきですね。教え方も確かに問題で、身近な話題から始めれば良い。たとえば、スマートフォンの画面が自動回転したり、歩数計代わりに使えたりするのは、たくさんのセンサーが入っているからです。そこを入口にするのはどうだろう。センサーは、かつてとても高額で、航空機に搭載するのがやっとでした。でも、半導体のプロセス技術が進んだことで安くなって、スマホにも使われるようになったわけです。では、半導体って何だろう、ダイオードって何だろう、量子力学って何だろうと知りたくなりますよね。ならば、と勉強しようという人も出てくるでしょう。ところが今は、問答無用でいきなり数学や物理を教えようとするからつまらなくなる。美術の教育もそうですよ。授業では自由に描きなさいと言われるんだけど、でもそれは一番難しいことです。いきなりそう言われても上手く描けるはずがなくて、だから嫌いになる。

成毛眞氏

【堀江】 その通りです。僕はあらゆる資格や免許は不要だと考えていますが、真っ先に不要なのは教員免許だと思っています。今の学校は勉強したくなくなる教育ばかりしていますよね。たとえば、音楽の時間に縦笛なんてやりたくないでしょう。好きな人いるんですかね。

【成毛】 最近、ジムに通っている人に聞くと、実はかつて体育が不得意だったという人たちが多い。体を動かしてみると案外楽しくて、はたと気付くんですよ。嫌いだったのは、体育ではなくて体育の授業だったんだと。

【堀江】 体育という言葉でくくられる中にも、得意不得意がありますからね。僕は球技が不得意なのですが、持久力はある。

【成毛】 マイクロソフト時代に各国対抗バレーボール大会に出たんだけど、下手すぎてドイツ人上司に殴られたことがあったな……。

【堀江】 僕はほとんど練習しなくても、アイアンマンレースは完走できたりするんです。そういうことに学校教育が気付けていない。選挙権にならって、大人の年齢が18歳だとすれば、小学校6年生の子供が大人になるまでが6年間。そこで、しっかりした教育を受けさせれば、リテラシーのある大人になるはず。学力と貧困率は相関関係にあるので、国を変えたいなら、教育を変えるのが一番手っ取り早い。

【成毛】 高学歴でも高い収入を得られない人がいる一方で、学歴がなくても高い収入を得られる人がいるのはなぜだと思いますか。

堀江貴文氏

【堀江】 前提として、学力と学歴は別だと思うんですけど、バカと天才は紙一重ということじゃないですか。高学歴の人は利口だから、動く前にリスクを分析し、その結果、前に進まない。でもバカはリスクを考えずに突っ込んでいくから失敗もするけど、またすぐに別の挑戦をするでしょう。

【成毛】 失敗したことに気付かないこともあるしね。私は、今の学校教育が天才と紙一重のバカを潰しているような気がしています。学校の授業に集中できない人の中には、いきなり大胆なことをやり始める人がいるでしょう。それが結果として成功につながることは少なくないと思います。

【堀江】 授業に集中できないのは、授業がつまらないからでもあるんじゃないですか。そこについては、ITの力で変えられると思っています。リクルートのスタディサプリって知ってます? 月額980円で、授業の動画を見ることができるサービスなんですが、有名なプロ講師の授業を自宅で受けることができる。

【成毛】 そうすると、ますますつまらない先生はお役御免ですね。

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(3)へつづく
(1)はこちら

「特別読物 『逆張りの思考』【拡大版】『これが「買い」だ―私のキュレーション術―』出版記念対談――堀江貴文VS.成毛眞」より

成毛眞(なるけ・まこと)
1955年北海道生まれ。中央大学を卒業後、マイクロソフト株式会社に入社。同社代表取締役社長を経て、投資コンサルティング会社「インスパイア」を設立する。書評サイト「HONZ」代表も務める。著作に『面白い本』など。最新刊は『これが「買い」だ』。

堀江貴文(ほりえ・たかふみ)
1972年福岡県生まれ。SNS media&consulting 株式会社ファウンダー。現在は自身が手がけるロケットエンジン開発を中心にスマホアプリのプロデュースも行うなど、幅広く活動している。近著に『君はどこにでも行ける』『ゼロ』など。

週刊新潮 2016年5月5・12日ゴールデンウイーク特大号掲載

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