9秒台が出なかった「桐生vsサニブラウン」大会 陸連の失策のせい?
風薫る季節の到来とともに始まった、陸上シーズン。「セイコーゴールデングランプリ」は、いきなり注目の韋駄天対決だった。“日本人初の9秒台”が最も期待される桐生祥秀(20)と“スーパー高校生”サニブラウン・ハキーム(17)、“五輪日本人最高記録”を持つ山縣亮太(23)が、初顔合わせをしたのである。しかし、3人ともが結果を残すことはできなかった。
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5月8日、等々力陸上競技場(川崎市)は、詰めかけた2万3000人の観客でほぼ満員状態。
昨夏の世界陸上選手権で銀メダルのジャスティン・ガトリン(34)=米国=や桐生、サニブラウン、山縣らが男子100メートルのスタートラインに立つと、大歓声が沸き起こる。そして、午後4時47分、スタートの号砲が鳴り響いた。
差は歴然
男子100メートルの元日本記録保持者で、「TEAM不破」代表理事の不破弘樹氏が解説する。
「まず、桐生はスタートで出遅れ、立ち上がりからガトリンに差をつけられた。前半で、自分のイメージよりも距離がひろがっていて、そこから食らいつこうと、身体に余計な力が入って手足がバタついていた。走りがスムーズでなくなっていました」
結果、記録は10秒27の4位に終わった。
「桐生に続いたサニブラウンはもともと200メートルの選手。確かに9秒台で走れる可能性は秘めていますが、走りも荒削りですし、期待するのはこれからです。この大会は、“桐生VSサニブラウン”と持て囃されていましたから、2位に入った山縣は気が楽だった。トップスピードに素早く持っていき、後半までキープするのがその持ち味。ただ、後半、目の前のガトリンに追いつこうと、力みが出てしまっていました」(同)
もし、ガトリンという目標物を意識しなければ、大会でのタイム10秒21を上回っていたはずだという。
■格上過ぎ
3人の韋駄天対決、夢の9秒台を邪魔したのは、どうやら、ガトリンの存在だったようである。
スポーツライターの酒井政人氏が言う。
「セイコーゴールデングランプリは、日本陸連が出場者を選びます。国内では記録上位の選手から順番に声をかけていき、一方、海外からは目玉となる選手を呼んで、大会を盛り上げようとするわけです。それこそ、本当は、世界記録保持者のウサイン・ボルトあたりを連れてきたかったのでしょうけど、予算とかの関係でガトリンに落ち着いたということでしょうね」
それでも、日本人選手にとっては格上過ぎたという。
「ガトリンのパーソナルベストは9秒74で、優勝タイムの10秒02は物足らない記録でした。だが、日本人選手はそれに圧倒され、五輪標準記録の10秒16さえクリアできなかった。もし、日本人選手だけで走ったら、違う結果になっていたかもしれませんが……」(同)
結局、日本陸連が大会を盛り上げようとした仕掛けが失敗し、落胆するはめになったということか。
「ワイド特集 風薫る日に綱渡り」より