カンヌ上映の日本アニメ「桃太郎」は海軍省の指示で作られた 落下傘部隊が鬼ヶ島へ!
カンヌ国際映画祭(5月11日~22日)には、カンヌクラシックスという部門がある。最新技術を結集して修復された過去の名作が上映される栄誉ある機会だ。
今回、この部門に日本からは、溝口健二監督の『雨月物語』(1953年)とともに、瀬尾光世監督の『桃太郎 海の神兵』が登場する。
45年4月に公開された74分の作品は、日本初の長編アニメーションと言われる。
「海軍省の指示で、松竹動画研究所が作ったものです。現在の貨幣価値で約4億円をかけた大作」(映画記者)
物語は、出征していた犬、猿、雉、熊が休暇で故郷に戻っているところから始まる。牧歌的な風景が描かれた後、場面は南洋に移る。歌を使って日本語を教えたりするが、やがて桃太郎に率いられ出撃。落下傘部隊の彼らは鬼ケ島に降り立ち、敵を降伏させる――。
「国の意図は戦意高揚でも、戦闘場面は少ない。細かい表情や演出に凝り、音楽は古関裕而でミュージカル風の場面もある。若き日の手塚治虫は、演出の中に隠された希望や平和への願いを感じ取り、また技術の高さにも感銘を受けて、自分もいつかアニメを作りたいと決心したほどです」(同)
フィルムは敗戦直後に焼却処分されたと思われたが、80年代の初めに松竹の倉庫で発見され、再上映や再評価が続いている。
「国策映画と単純に批判することはできません。発注した軍の意向に沿いながらもテーマと違うところで本音が出ている作品なのです。日本の長編アニメのいわば源として、カンヌでどう見られるか興味深い」(映画評論家の白井佳夫さん)
カンヌで上映されるデジタル修復版のDVDは、8月3日に発売される。