トランプ・ヒラリー・スーチーに並んだ草間彌生が明かした自殺願望との闘い

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 トランプ、ヒラリー、アウン・サン・スーチー……。4月21日に米誌「タイム」が発表し、錚々(そうそう)たる顔ぶれが並んだ「世界で最も影響力のある100人」に、日本人で唯一、名を連ねたのが前衛芸術家の草間彌生さん(87)だ。「急進的で革命的」と絶賛された彼女の人生は病との闘いでもあった。

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「草間さんの作品はオークションで1億円以上の値が付きますが、明治以降のアーティストでそんな日本人女性は彼女以外にいません。いや、世界を見渡しても、ほとんどいないと言って差し支えないでしょう」

 こう解説するのは、草間作品のコレクターとして知られる高橋龍太郎氏だ。

 また、彼女と独占契約を結んでいるギャラリー「オオタファインアーツ」の大田秀則代表も、

「草間さんは『アーティスツ・アーティスト』、つまり芸術家のための芸術家と称されています。他の芸術家から絶大なる尊敬を集めていて、誰の真似でもなく、誰も真似できない、完全オリジナルの超越した作品を残してきました」

 と、彼女の「唯一無二性」を強調する。

 そんな草間さんの絵画をはじめとする作品の特徴は、何と言っても「ドットとネット」と評される「水玉と網」模様である。その独特の表現には、両親との確執によって幼少時から「強迫神経症」を患い、幻覚や幻聴に悩まされてきたことが影響している。彼女自身が、

〈四六時中絵を描いていないと自殺しそうで大変なのです〉(「婦人公論」2014年2月22日号)

 と述べているように、病を「昇華」させることで比類なき芸術を確立してきたのだ。こうして独自の精神世界を築いてきた彼女は、

「テレビを観ることもなく、芸術のことしか頭にない」

 と、大田氏が説明する。

「私が草間さんと初めて会ったのは1987年でしたが、彼女のオーラに圧倒され、『好きな食べ物は?』なんてことしか聞けませんでした。すると草間さんは、『そんなことはどうでもいいから、あなたは私のアートに貢献しなさい』と一蹴。とにかく、自分の作品が後世に残ることだけを考えていて、他のことには一切関心がない方なんです」

■総理もタジタジ

 高橋氏が後を受ける。

「4年前、ロンドンで展覧会を開いた際、コレクターなどセレブだけを集めた画廊主催の催しが行われました。彼らは『上客』ですから、大抵のアーティストはこの場を大事にするものですが、草間さんは『疲れた』と言って欠席。いかにも彼女らしかったですね。また3年前に、一緒に安倍総理を表敬訪問した際、草間さんは自分がいかに芸術に身を捧げてきたかを早口で怒濤のように説明。安倍総理はほとんど何も言えず、気圧(けお)されている感じでした」

 そんな草間さんに「世界の100人」選出後、改めて近況を尋ねた。

「朝は9時にスタジオに来て絵を描きだして、午後の3時頃に頭がふらふらになるほどにぼおっとして、お昼を食べてないことに気付くほど制作に明け暮れる毎日です」

 とした上で、

「私は精神病院に住んでいて、子供の頃から何度も自殺未遂をしてきました。私の人生の中で狂気の中に閉じ込められたことも何度もありました。もっとたくさんの絵を描かなきゃならないのにこんなところで自殺してはならない。自殺願望と闘い、狂気と闘い、みなさんに一人の芸術家として認めていただいたことに深く感謝しております」

 これぞまさに、「疾風怒濤」の超人人生である。

「ワイド特集 淑女たちの疾風怒濤」より

週刊新潮 2016年5月5・12日ゴールデンウイーク特大号掲載

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