初来日のルノワール作品 120億円「死んだときには一緒に焼いて」作との関係も

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 やはり、名画には謎がついてまわるものなのか――。

 4月27日から六本木の国立新美術館で「ルノワール展」が催されている。担当する学芸員の横山由季子氏によれば、

「ルノワール人気が高い日本にも多くの作品がありますが、代表作がまとまって来る機会はありませんでした。今回はオルセーとオランジュリー美術館の所蔵品によりそれが実現しました」

 目玉となる初来日作品は《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会》である。

「全体に青みがかった色彩と見る人を招き入れるような構図が特徴的。ルノワールが35歳の時に描いた印象派の最高傑作です」(同)

 よく知られた絵であるが、美術史研究者が言うには、

「実は同名の作品が1990年のサザビーズに出品されています。絵画コレクターとして知られた大昭和製紙の斉藤了英名誉会長(当時)が約119億円で落札し、話題になりました」

 当時、斉藤氏はこの絵を愛するあまり、「死んだときは一緒に焼いてほしい」と発言し、批判を浴びた。初来日ではなかったのか?

「構図は一緒ですが、全くの別物です。まず、サイズが違います。今作は131・5×176・5センチですが、斉藤氏所有だった作品はその半分ほどで、タッチも荒々しい」(横山氏)

 先の研究者は、

「ほぼ同じ時期に制作されたと考えられています。ただ、どちらが先に描かれたのか不明で、習作ともいえない。一説に、斉藤氏旧蔵の作品は、人に売るためルノワールが描いたレプリカ、とも言われてますが……」

 同じ作品が2枚ある理由はよくわかっていないのだという。さらに“斉藤版”は96年の本人没後、アメリカの画商を通じて売られ、行方知れずとなっている。

「スイスの個人蔵という噂がありますが、根拠はありません」(同)

 こうした奇縁に目をこらすのも一興である。

週刊新潮 2016年5月5・12日ゴールデンウイーク特大号掲載

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