ついに公正取引委員会から注意を受けた新聞の「押し紙」問題 主要5紙の回答は

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 部数水増しのため、新聞社が販売店に注文させて買い取らせる新聞、通称「押し紙」。3月末、朝日新聞が公正取引委員会から口頭で「注意」を受けたのも、この押し紙行為に関わる内容だった。

 さらに、遡ること2月15日に記者クラブで行われた会見では、朝日新聞の「エース記者」大鹿靖明記者が“押し紙が横行している”“私が見聞きした限りでは25%から30%が押し紙になっている”との実態を明かす場面があった。仮に全部数の30%として、朝日新聞の押し紙をカットすると、約670万の販売部数のうち約200万部が失われることになる。他の大手紙の状況も同様で、「私のところに最近来た相談では、関東の産経の店主で、水増しが約26%、毎日に至っては約74%が配達されていなかったという、信じがたい店がありました」(新聞販売問題について詳しいジャーナリストの黒薮哲哉氏)。

 新規の新聞契約獲得が困難な昨今だが、朝日への公取注意を受け、新聞界は販売店主が公取に駆け込むリスクを抱えることになってしまった。

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急激に部数が減少している新聞業界

 まがりなりにも、新聞は長い間、報道の王様であり続けてきた。しかし、これほどまでの実部数低下に追い込まれると、社会に何が起こるのか。

 上智大学新聞学科の田島泰彦教授は言う。

「世界的に珍しい宅配制度という仕組みで大部数を達成した日本の新聞は、独自で取材をかけ、編集するメカニズムによって、国民に一般的な教養を与え、言論のプラットフォームを構成してきた。事実伝達のインフラのようなものでした」

 日本の新聞の発行部数は最盛期で5000万部超。それだけの人口を一定の知的レベルに押し上げ、分厚い知識階層を育ててきた。

「さらには、権力のチェック機能としての役割もありました」(同)

 新聞の衰退は、これらの機能の衰退も意味するのかもしれない。

■ネタというコンテンツの強化

 全国紙で記者を務め、販売にも携わった『小説 新聞社販売局』著者の幸田泉氏が言う。

「パソコンやスマートフォンが広まったことで情報革命が起き、社会情勢も変わった。しかし、新聞社は身の丈に合った部数に変更しようとは考えず、発行部数を維持することばかり考えているのです。この度、大鹿さんから驚きの質問が出て、公取が朝日に注意を入れた。これを契機に、朝日だけでなく、業界全体が部数を健全化する入口に立ってほしいと思います」

 元毎日新聞常務の河内孝氏も言うのだ。

「社会情勢が変化しているのに、新聞はタンカーと同じで“大きいことは良いことだ”とばかりに部数を維持しようとすることばかりをズルズルと続けている。それを止め、経営を合理化した上で、ネタというコンテンツを強化すれば、まだまだ新聞はやっていけると思うのですが……」

 読、朝、毎、産経、日経の主要5紙に尋ねると、おおむね「部数注文は販売所の自主的な判断でなされています」(朝日)などとの回答だったが、水増し部数の存在については肯定も否定もしなかった。

 新聞社が報道の王様であり続けるためには、部数水増しという誤魔化しを直視し、改めることから始めるべきなのは言うまでもないのである。

「特集 『エース記者』『販売店主』内部告発!『朝日新聞』部数水増し3割で『大新聞』の明日」より

週刊新潮 2016年4月28日号掲載

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