[股間枝切り鋏事件]妻が語った「小番被告はペット」今後は離婚し海外の美術学校へ

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東京地裁

 汝、事実を語れ、我は法を語らん。裁きを受ける者を前にした法吏の在り様を示したローマの格言だが、証言台に立った元法科大学院生の小番一騎(こつがいいっき)被告(25)はどこまで真実を吐露したのか。間男をぶん殴り、あろうことかハサミで陰茎を切り取ってしまった「弁護士のタマゴ」が考えた法廷戦術。

「小番被告は黒のスーツで坊主頭。事件直後に見た写真よりも少し髪が伸びていました」

 そう振り返るのは、傍聴人の1人だ。4月14日、東京地裁では、小番被告の被告人質問が行われていた。20席ほどある傍聴席は、ぎっしり満員である。

 公判はこれまで4回。そこでは、小番被告が被害者の事務所に乗り込み、ぶん殴った末に陰茎を切り取る様子が生々しく語られ、その一方でセクハラを受けたと思われていた妻が、浮気をしていたことも冒頭陳述などで明らかになっている。さらに前回(3月18日)の法廷では、妻の供述調書も読み上げられた。

 そこでは学生で収入の少ない小番を疎ましく思っていたこと。被害者の事務所で働くうちに仕事が楽しくなってしまい、小番被告を「ペットと思えばいい」と考えるようになったこと。そして、これからは「名字を変え、人生をリセットしたい」と離婚をほのめかし、「海外の美術学校に行きたい」と、別々の暮らしを考えているとも話している。

 嘘をついて夫を“チン切り”に走らせたのに身勝手な妻だが、小番に対する愛情は微塵も感じられない。

 これに対して夫は、何と証言したか。

■手紙も100通以上

「最初は無表情で答えていた小番被告でしたが、5分と経たないうちに嗚咽(おえつ)が始まり、裁判官から“もう少し大きな声で”と注意を受けていました」(傍聴人)

 それによると小番と妻との出会いは東日本大震災のボランティア活動だった。結婚した理由を聞かれると、

「同棲を始めてから3カ月経ち、順調でしたし、お互い愛し合っていたので……」

 とまた嗚咽。そして、弁護士から妻への思いを聞かれると、ここぞとばかりに、

「僕は妻を自分の命より大切に思っていて心から愛しています」

「(妻は)毎週必ず面会に来てくれていて、これまでに手紙も100通以上送ってくれていて、今後も僕を支えたいと言ってくれているんです」

 妻の供述調書とはずいぶん違って夫婦和合を強調するのである。

 一方、対する検察は、またもや「グロテスク戦略」。被害者の陰茎を切るシーンをより生々しく小番に証言させるという手に出た。

 検事「ハサミはどっちの手で?」

 小番「右だったと思います」

 検事「何回?」

 小番「1回切って、皮がまだつながっていたので2回ぐらい動かしました」

 検事「(陰茎を)流さなくても良かったのでは?」

 小番「(再生手術が)出来ないようにと考えたのだと思います……」

 さて、この日の法廷戦術を、元東京地検特捜部副部長の若狭勝氏(現衆院議員)に解説してもらう。

「事件の構図は、妻がセクハラを受けたと吹き込まれた小番が、犯行に及んだら実態は不倫だったというもの。事実に争いはありませんが、小番の恨みが将来妻に向かう可能性もある。家族関係の悪化は情状酌量にマイナスですから“今は関係修復している”とアピールする戦略でしょう」

 次回公判は6月。判決は、夏ごろになる。

「ワイド特集 浮世にも活断層」より

週刊新潮 2016年4月28日号掲載

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