嵐・大野くんが最も敬愛するアーティスト 伊藤若冲ってどんな人?
嵐のリーダーを務める大野智は、絵画やオブジェを制作するアーティストとしての一面を持つことでも知られている。現代美術家の奈良美智氏などとも親しい彼が、「最も敬愛する絵師」とリスペクトしてやまないのが、江戸中期に活躍した京都の絵師・伊藤若冲(1716~1800)だ。
友人から若冲の画集を贈られたことがきっかけで若冲にハマったという大野が特に好きなのが、細緻をきわめる超絶技巧でニワトリや鸚鵡などのさまざまな動植物を描いた全30幅の《動植綵絵》(宮内庁三の丸尚蔵館蔵)だ。大野がナビゲーターを務めたNHK BSプレミアムで放送の「若冲ミラクルワールド」(全4回/4月3・10・17・24日再放送中)でも、大野が展覧会で実際の作品に二時間以上見入ってしまったというエピソードが紹介されていた。
そして番組内で大野が「《動植綵絵》の中でとても気になる作品」として挙げたのが、全30幅の中で唯一想像上の生き物を描いた、「老松白鳳図」だ。鳳凰の白い羽の先には、なぜか赤と緑でハート形の模様が描かれており、大野も「江戸時代にハートの形を描いたのはなんでだろう?」と、若冲の自由な想像力に驚嘆の声をあげていた。
ニワトリの鮮やかな羽に超絶技巧が光る伊藤若冲《紫陽花双鶏図》(エツコ&ジョー・プライスコレクション)は、動植綵絵以前に描かれた作品と見られる
そのように謎に満ちた作品を多数描いた若冲だが、一体どんな人物だったのだろうか?
京都錦小路の四代続く青物問屋に生まれた若冲は、若くして若旦那の座をなげうって隠居生活に入り、画業に邁進した人物だった。絵画制作以外には目もくれず、ひたすらに自分の描きたいものを描き続けた人生だったが、周囲から「変わり者」扱いされることも多かったようだ。
若冲の著色画、水墨画、版画などの名品を一挙掲載し、その生涯を分かりやすく紹介するビジュアルブック『若冲ワンダフルワールド』の執筆者の一人である美術史家の狩野博幸氏も、同書で以下のように記している。
「周りの旦那衆ならずとも、誰もが彼を無趣味・無芸の“唐変木”と見なしていたことは、万が一にも疑いようがない。(中略)若冲というひと、まことに厄介な性格というほかない」
ジャニーズとアーティストという二足のわらじを履く大野も、周囲の評価など気にせずにひたすらに自分のやりたい事を追求する若冲の姿に、自らの理想を重ねあわせているのかもしれない。
辻惟雄氏、小林忠氏、狩野博幸氏、太田彩氏、池澤一郎氏、岡田秀之氏など、当代一流の若冲研究者が勢揃いした『若冲ワンダフルワールド』には、大野が愛する《動植綵絵》が全幅掲載されている。また4月22日から上野の東京都美術館では「生誕300年記念 若冲展」がはじまる。大野が最も敬愛する若冲の生き生きとした姿に触れてみてはいかがだろうか。