朝日新聞は放射線量測定の“常識”を知らなかったのか、“意図的”なのか

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「朝日新聞」3月14日付朝刊の記事に“第2の吉田調書誤報になりかねない”との声が上がっている。1面トップを飾ったその内容は“鹿児島県の川内原発周辺に設置されたモニタリングポストは80マイクロシーベルトまでしか測れず、住民避難の判断に使えない”というもの。が、そもそも件のモニタリングポスト「NaI式検出器」は低線量の検出を目的とするもので、高線量率カバーのためには、電離箱式検出器が併用されている。東京工業大学原子炉工学研究所の松本義久准教授は「併用するのは、日本だけでなく、世界の常識。記事にはその説明もありませんでした」と語る。

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1面トップにデカデカと掲げられた見出し(「朝日新聞」3月14日付朝刊)

 松本准教授は、朝日が「使えない」と書いたNaI式検出器の優れた点を次々と明かす。

「事故の際、放射線値はいきなり上がるわけではない。バックグラウンドレベルから、NaI式で測れるレベルを通り過ぎて上がっていく。ですので、事故の際にはむしろ微細な数値が測れるNaI式の方が適しているともいえる。また、細かい数値が見られることから、いつもと数値が変わっていないという確認の目的でも有効で、住民に安心感を与えることもできるのです」

 NaI式と電離箱式の「守備範囲」の違いについて、東京大学大学院の岡本孝司教授(原子力専攻)は、

「車の運転席にある速度メーターを思い浮かべてみて下さい。100まで測れるメーターで1を計測したとしても針はほとんど動かない。が、10までのメーターだったら、1を計測しただけでも針の動きはハッキリと分かる、ということです」

 そう説明するが、問題の記事を書いた記者は、2種類の検出器の併用が「常識」であることを知らなかったのか。原子力規制庁の担当者は首を傾げる。

「記者はおそらく、2種類の検出器の組み合わせで測るという常識を知っていたのではないかと思うのですが……。規制庁に取材をすればわかることだし、取材をしたと言っていますから。そう考えると、あの記事にはかなり意図的なものを感じてしまいます」

朝日新聞本社

■朝日の回答

 問題の記事の末尾には、2人の記者の名がある。朝日の関係者によると、

「2人とも、原発に関して極めて意識の高い記者です。1人は反原発デモに行ったことがあり、もう1人は脱原発関連の本の共著者となっています」

 一連の記事や、それを執筆した記者について朝日に取材を申し込んだところ、

「(原発)周辺住民が安心して暮らすにはどのようなモニタリング態勢であるべきなのか、という視点で取材し、紙面化しました」

 との回答が寄せられた。

この記事に関しては、原子力規制委員会の田中俊一委員長もこう述べている。

「モニタリングによって、我々がいろいろな判断をするために必要十分かどうかということが基本になるのです。それが、あたかも全く判断できないような報道をするということは、原発の立地自治体とか、その周辺の方たちに無用な不安をあおり立てたという意味では、非常に犯罪的だと私は思っています」

 先の岡本教授が言う。

「今回の記事については、原子力規制委員会が言っていることが100%正しいので、朝日は早めに白旗を揚げたほうがいい」

 2年前、朝日の「吉田調書」に関する記事の過ちをいち早く指摘したノンフィクション作家の門田隆将氏は次のように語る。

「今回の記事も、吉田調書に関する誤報の時と同じことを繰り返している。自らの主義主張のためには、事実はそっちのけ。原発の再稼働を阻止するために思い込みだけで記事を書いているのです」

「吉田調書誤報記事」の第一報は、〈自治体は何を信用して避難計画を作れば良いのか。その問いに答えを出さないまま、原発を再稼働して良いはずはない〉と締め括られていた。今回の問題記事にも、〈事故時の住民避難の態勢が十分に整わないまま、原発が再稼働した〉という一文がある。

 両者が酷似しているのは、偶然ではあるまい。

「特集 これは第2の『吉田調書誤報』か!『原子力規制委員長』が犯罪的と怒った『朝日新聞』の問題点」より

週刊新潮 2016年4月7日号掲載

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