イスラエル「精鋭サイバー部隊」の「ハリポタ」訓練

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 イスラエルとは、「神に勝つ者」の意だそうな。カナンへの帰途、一晩中何者かと組み合ったノアの子孫ヤコブ。朝の訪れとともに相手=神はヤコブにその名を授けて去り、彼はユダヤ人の祖となったという。

「周囲の国がすべて敵と言ってよい同国は国民皆兵、軍も精強で知られます。が、最近、サイバー部隊の訓練に『ハリー・ポッター』シリーズの世界観を取り入れ、話題になっています」(外信部記者)

〈クィディッチ〉で精鋭が育つ!?(写真・ゼータイメージ)

 陸海空軍から選ばれたサイバー部門の士官たちが、ホグワーツ魔法魔術学校の寮〈グリフィンドール〉や〈スリザリン〉といったチームに分かれ、バーチャルなトレーニングを行ったのだ。二重スパイ〈スネイプ先生〉となって敵〈死喰い人〉ネットワークに潜入したり、魔法の杖に跨がって行う空中球技〈クィディッチ〉をコンピュータ内でやったりと、訓練内容はなんだか楽しそう。

 だが、日本安全保障・危機管理学会主任研究員の新田容子氏は言う。

「イスラエル軍のサイバー部門は米露にも伍す優秀さで知られています。同国は官民一体でセキュリティ技術を開発、輸出するなど、日本の一歩も二歩も先に行っています」

『ハリポタ』訓練公表も、同国のトレーニング・プログラムをアピールするためというわけか。

 軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏も言う。

「イスラエル軍内の特殊サイバー・ユニット、8200部隊は世界的に見ても凄腕。例えば2010年に発覚したイランのウラン濃縮施設の破壊工作。あれは同部隊と米の国家安全保障局(NSA)との共同作戦と囁かれていますし、07年にシリアの核施設をイスラエルが空爆した際は、シリアの防空システムを無力化、やすやすとF15戦闘機を侵入させたと言われています」

 原発関連施設や軍事ネットワークのようなインターネットから切り離されたシステムにまで、マルウェアを忍ばせたりハッキングしたりが可能だというなら、その実力は底知れない。

「超エリート教育を受けた同部隊出身者は除隊後、次々にIT分野で起業。グーグルやアップルなどが近年、こぞって同国企業を買収していますが頷けます」(同)

「国際社会で勝つ」には、腕力だけではダメなのだ。

週刊新潮 2016年4月7日号掲載

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