綱取りはムリだと皆知っていた「琴奨菊」の遊びすぎ緩みすぎ

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 終わってみれば、白鵬の36回目の優勝と、ちっとも面白味のない結果に終わった大相撲春場所。戦犯はこの人、大関・琴奨菊(32)である。綱取りが注目されるも、勝ち越しがやっとという不甲斐ない15日間だったが、場所前の姿を見れば、結果は自ずとわかっていた。

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浮かれていた頃

 大関は先場所、日本出身力士として10年ぶりに優勝を遂げた。連覇すれば、18年ぶりの日本人横綱の誕生と期待が高まる中、冷静だったのは、元横綱の北の富士勝昭氏である。

 初日のNHKの中継では、

「心配ですね。だいぶ心配です」

 連載を持っている東京中日スポーツ紙でも、

「横綱昇進はかなり難しい。もし優勝したならこの白髪頭を差し出すつもりだ」

 と言い切っていた。

 果たして結果はと言えば、中日までこそ7勝1敗と優勝争いをしていた大関は後半に謎の大失速。巨体は幾度となく転がされ、結局、8勝7敗という平幕並みの星しか残せなかったのである。

千秋楽の琴奨菊

■ご祝儀も…

「角界関係者のほとんどが、奨菊の綱取りなんてムリ、と思っていましたよ」

 と言うのは、さるベテランの相撲担当記者である。

「場所前に気持ちが緩みすぎ。お座敷に呼ばれて遊ぶことに夢中で、相撲なんて二の次と思ってるようにしか見えませんでしたから」

 初場所千秋楽(1月24日)から、2月末日の春場所開催地・大阪入りまでの日程を見ても、36日間で完全オフはわずか1日。

 東京と地元・福岡での2度の結婚披露宴や、節分の豆まき、『SMAP×SMAP』などのテレビ収録、DVDの発売イベントなどに出ずっぱり。肝心の稽古は疎かで、合間合間の基礎トレのみで済ませていたのだ。

「大阪入り後も、優勝祝賀の水上パレードや、防火イベント、病院の慰問などをこなしていました。関取との申し合いを始めたのは3月7日と、初日のわずか6日前でした」(同)

 3月10日、大関の訪問を受けた兵庫県の赤穂中央病院の理事長に聞いても、

「場所の直前なので、何度も念押ししましたが、“大丈夫”と言うので甘えることにしました。イベントでは、“琴バウアー”を披露してもらったり、思い切りぶつからせてもらったり……。終わった後は、うちの病院で筋力トレーニングをし、夜はみんなで焼肉を食べに行きました」

 患者を励ますのは結構だが、人生で最も大切な時を目の前にした勝負師とは思えない、緊張感の抜けた姿を見せている。それもそのはずで、先の理事長は、

「知り合いのタニマチに相場を聞き、ご祝儀も渡しています」

 と言うから、なるほど、厳しい稽古よりこちらが気になるワケである。

 先の記者が言う。

「奨菊はこの場所中、奥さんを大阪に同伴していましたが、地方場所で妻と一緒なんて、角界の常識に外れている。要は、新婚気分が抜けてないんです」

 相撲評論家の中澤潔氏もバッサリ。

「もともと大関として安定した成績が残せていないのに、たまたま一度の優勝で浮かれてしまった。横綱とは、そんなに甘い地位ではありません」

 綱取りの夢は、桜のようにはかなく散り――。

 かくして琴奨菊は、元の「ダメ大関」に舞い戻ってしまったのである。

「ワイド特集 三日見ぬ間の桜かな」より

週刊新潮 2016年4月7日号掲載

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