“長寿の郷”京都府京丹後市で出会った「100歳のコーヒー党」と「91歳の現役営業マン」〈長寿村でやってみた「突撃! 隣の晩ごはん」(1)〉

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■91歳の現役営業マン

 続いて、網野町の隣、ズワイガニの産地で知られる丹後町だ。

 1925年2月28日生まれの東理代吉さんは、91歳。

「あと一日違って生まれていたら、今まだ、20代やで」

 開口一番で冗談を言う彼は、現役の営業マンである。

「戦争から帰って、青年団に入ると共産党の方がいた。私はバリバリの軍人だったから、その人に意見するんだけど、いつも論破された。それで共産党に入ったんです。敵をやっつけるつもりが、やっつけられたわけ」

 当時、共産党に対する世間の目は痛烈で、何も知らず結婚した妻の世津子さん(86)に対しても矛先は向けられたという。

「妻は職場をレッドパージされ、さて何をしようか考えたところ、本が好きだったので書店をはじめた」

 その後、教材や文具を学校へ納入するまでに商売を拡大。59年からは、9期、町議も務めた。現在、書店は息子に任せ、車で駈けずり回る。その一日のスケジュールは過密だ。

 朝は昼前に起床し、食事を摂ると営業先の学校や幼稚園へ。15時頃に自宅に戻り、昼食を摂ってまた出発。19時頃に共産党の地区委員会に顔を出し、20時過ぎに戻って帳簿整理。21時にNHKニュースを見ながら晩ごはん。23時頃から仮眠をとり、深夜2時から新聞3紙に目を通す。その後風呂に入って、朝方6時に就寝。

 働き盛りのサラリーマンでも音を上げそう。

■毎朝らっきょう、毎晩ニンニク

 元気の源、食事について世津子さんに聞いた。

「99歳まで生きた義父は、いつも弁当にらっきょうを入れていたので、朝、必ず食べています。イモ、野菜、海藻、夫婦とも海育ちなので魚が大好き。肉はあまり食べなくなりました。晩ごはんの前に必ず、レンジで蒸したニンニクを一片、口臭予防で牛乳を飲みます」

 本日の献立は、カレイの煮付け、茹でブロッコリー、のり、サツマイモの天ぷら、白菜のお汁。さっそく、晩ごはんを食させていただくと、お汁は少々薄味だが、カレイは濃い目の味付けで美味い。とはいえ、健康を考えたらどうなのだろう。

「薄くせなアカンと聞きますが、おいしく食べるのも大事かなって」(世津子さん)

 と、塩分については、あまり気にとめていないのだ。どうやら、薄味が長寿の秘訣ではないのである。

「特集 京都 沖縄 長野 長寿村でやってみた『突撃! 隣の晩ごはん』」より

週刊新潮 2016年3月17日号掲載

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