もう「奇策」しか出ない「反トランプ」包囲網

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 英語でIll weeds grow apace.(雑草ほどすぐ伸びる)、The devil's children have the devil's luck.(悪魔の子には悪運が備わる)とは、「憎まれっ子、世に憚る」の意味。

 メキシコ大統領から悪魔ならぬヒトラーに例えられてもどこ吹く風、ドナルド・トランプ氏(69)が“スーパーチューズデイ”も快勝、首都ワシントンでは敗れたものの、米大統領選の共和党候補争いで首位を独走中だ。

 メキシコからの不法移民を「麻薬密売人」「レイプ犯」呼ばわりした上、国境にメキシコの負担で巨大な壁を作ると改めて発言。2月末の世論調査ではヒスパニック系の80%がトランプを「好まない」、うち72%が「非常に好まない」とし、彼らの反感は高まるばかり。

「ことに、合法移民の怒りは大きい。永住権は得ていても市民権までは取得していなかった人々が、現在、〈トランプ阻止のため〉と続々と市民権を申請しています」(国際部記者)

 今年1月までの半年間で、昨年比14%増と申請数は急増、今年度は例年より20%以上増の見込みだという。

 長年、米大統領選をウォッチしてきた外交ジャーナリストの手嶋龍一氏は言う。

「いまや米国でヒスパニック系は20%に達する勢いで、マイノリティ人口も40%に及ぼうとしています。この層を無視する選挙戦術は従来では考えられません」

 だが、それでも大方の予想を覆し、本選進出の可能性が高まり、“反トランプ”の動きが慌ただしい。ワシントン・ポストなど大手紙はトランプ批判の論陣を張り、共和党主流派も続々と反対意見を表明。共和党候補のルビオ氏からは、自身が劣勢のオハイオでは、トランプ以外の対立候補に投票するよう支持者に呼びかける“奇策”まで飛び出した。これ以上、トランプのリードを広げぬためだ。

「ただ、“トランプ旋風”の根は意外に深い。トランプを止められるのか、予断は許しません」(同)

 雑草は踏まれるほど強くなるというし――。

週刊新潮 2016年3月24日号掲載

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