「ピクサー」に一杯食わされていた「S・ジョブズ」

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 アメリカのピクサー・アニメーション・スタジオといえば、世界で初めてCGなどのコンピュータ技術だけで描いた長編アニメ映画『トイ・ストーリー』や『ファインディング・ニモ』などの作品でお馴染みだ。

 2月に設立30周年を迎えた今年は、最新作『アーロと少年』が3月12日に公開。東京都現代美術館で「ピクサー展」開催と賑やかだ。

 このピクサーの誕生に大物がかかわってきたことは、あまり知られていない。

「さかのぼれば、ジョージ・ルーカス監督のルーカス・フィルムのCG部門でしたが、監督は離婚の慰謝料捻出のため売却。1986年、1000万ドルで買ったのがあのスティーブ・ジョブズです」(CGに詳しい映画関係者)

 ジョブズがアップルを追放されていた時期だった。

「アップルを超えるコンピュータを作って見返そうとしたのです。一方、社員はCGでアニメを作る志を持ち続けていた。結果、社員が開発したのは、ジョブズが求めた家庭用ではなく、画像処理に優れたコンピュータ。さらにその販売宣伝に使うCGアニメを作る方に力を入れ、高い評価を得るようになる。ジョブズは当初のもくろみと違う方向に進んだと知り、一杯食わされた形でしたが、社員の才能を認め、CGアニメに力を注ぐようになった」(同)

『トイ・ストーリー』の成功まで約10年。ジョブズは、作品の内容に口出しせず、合計5400万ドルもの私財を投じた。ピクサーは2006年に74億ドルでディズニーに買収され子会社となるが、将来を見据えたジョブズの発案だった。

 今年のアカデミー賞では、『インサイド・ヘッド』が長編アニメーション賞に輝いた。ジョブズを納得させた創造力は枯れていない。

週刊新潮 2016年3月10日号掲載

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