スクープは午前3時に流れる! エコノミスト・伊藤洋一氏が教える実践的情報収集術

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■午前3時にニュースをチェックする意味

 テレビやラジオのニュース解説でもお馴染みのエコノミスト、伊藤洋一氏は毎朝午前3時に目を覚ますのが習慣だ。

 その理由の一つは、世界のマーケットをチェックするのに興味深い時間帯だからだという。日本時間の午前3時は、夏時間の場合ニューヨークで午後2時(冬時間ならば午後1時)。つまり残り2~3時間でニューヨークのマーケットが終わるという時間帯だ。

 またすでに終わっているヨーロッパのマーケットの終値をチェックできる。

 もう一つ、「午前3時」の理由がある。

 その時間帯は「スクープ」配信時間だからだ。

 以下、伊藤氏が自らの情報処理について綴った新著『情報の強者』から引用してみよう。

エコノミスト・伊藤洋一氏

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 かなり前から午前3時に目を覚ますという習慣を続けているのには、ちゃんとした理由がある。日本の新聞社がその日の朝刊に載せる“特ダネ”を、自社のネットサイトに掲載するのが、午前3時以降だからだ。

 新聞は配達地域によって「版」が違う。新聞社から遠い地域は締め切りが早く、都心など近距離の地域は締め切りが遅いので、その時間に応じて「版」が変わってくる。お手元の新聞をご覧になれば、1面の上左側余白に、「○○版」と書かれているはずだ。

 朝刊の最終締め切りは午前1時45分。

 都心に配達される最終版であれば、この時間の原稿まではぎりぎり朝刊に掲載できる。大きな事件や事故が起きた時は、この締め切りまで最新情報を入れ続けることになる。

 ただし新聞協会の申し合わせで、それ以後に起きたことはその日の朝刊には載せない規則になっている(ごくたまに例外はあるが、それは新聞各社が申し合わせて締め切りを延長するという、極めて稀なケースだ)。

 大きな災害や重大事件の犯人の逮捕といった、各紙が一斉に報じることについては、新聞を意識する必要はない。テレビを見たほうが速いだろう。私がチェックしているのは、あくまでも“特ダネ”の類である。言うまでもなく、“特ダネ”とは、一社が、独自に「うちはこんな大きな情報をもっていますよ」と大々的に報道するネタのこと。

■スクープは取材力のバロメーター

「スクープ第一主義」は批判にさらされやすいし、実際に、その弊害があることも事実だろう。時に強引な取材の原因ともなるし、「飛ばし記事」を生む危険性もある。しかし、それでも基本的に、“特ダネ”が多い新聞は良い新聞だと考えてよいだろう。それは取材力を示すバロメーターだからだ。

 記者クラブの存在もあって、とかく横並びになりやすい日本の報道において、他社を出し抜いて、独自の記事を載せるには、記者側の「基礎体力」が必要となる。情報の収集力、分析力、検証力等々から基礎体力は構成されている。そして、その基礎体力は普段の紙面でも必ず活かされているはずだ。

 別の言い方をすれば、“特ダネ”は、その社の記者たちが頑張っている証拠ということになる。その頑張った成果を、他社に横取りされたらたまらない。各社はお互いに最終版の締め切り前の各版の新聞をチェックしていて、「ネタ」を落としていないかを見ている。もしここで“特ダネ”に気づかれたら、後追いされてしまう。

 だから各新聞社は、最終版まで特ダネを絶対に載せないのだ。もちろんネットにも掲載しない。

 逆に言えば、午後10時頃から午前2時頃までの新聞社のネットサイトの情報は、あまり面白くない。この段階では、特ダネは決して載らず、隠されているからだ。

 午前3時になると事情は変わる。「他社が絶対追えない時間」だからだ。こうして新聞社のネットサイトには特ダネ、独自ダネが並び始める。それをチェックするために、私は午前3時、薄目を開けるのである。

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 伊藤氏は、3時に起きた後に再度眠り、午前6時前に起きるのが日課になっている。もっとも、これは情報分析や発信が仕事だからであって、「健康のことを考えたら誰にでもお勧めできる習慣ではありません」と『情報の強者』の中で念を押している。

デイリー新潮編集部

2016年3月10日掲載

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