1年遅れで「ホンダ」新社長が“ライバル一掃”人事

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 また、人事の季節が巡ってきた。ある者にはわが世の春が到来し、ある者は後輩に先を越されて涙し、そしてある者は“敗者”として会社を去って行く。ホンダの八郷(はちごう)隆弘社長(56)は2月24日、大幅な役員交代を発表した。この人事は粛清か、それとも世代交代か。

 ホンダの取締役は14人。元三菱UFJフィナンシャル・グループ社長で社外取締役の畔柳信雄氏(74)など取締役5人が6月の株主総会で退任することを決めた。そのなかには、代表権を持ち、日本自動車工業会(自工会)会長も務める池史彦会長(63)と、岩村哲夫副社長(64)も含まれている。全国紙の経済部記者によれば、

「専務と常務も退任しますが、いずれも八郷さんより年上で実力者と呼ばれた人たち。1〜2年後には、八郷さんより年上の役員はすべて“粛清”されるでしょう」

 八郷氏の社長就任は昨年6月。就任1年にも満たずに、“ライバル一掃”とは、一体何があったのか。

「いや、粛清ではなく、世代交代です」

 こう苦笑するのは、自動車専門誌のベテラン記者だ。

「ホンダの人事は、中央官庁の人事に似ているのです。省庁では事務次官が代わると年長者の多くが外に出されますが、それと同じ。八郷さんに“バトン”を託した前社長の伊東孝紳さんも、就任後に多くの先輩役員を退任させています」

 だが、伊東前社長は自分より齢上の、池会長と岩村副社長には手を付けなかった。

「伊東さんは社長退任と同時に、池さんにも身を引かせる考えでしたが、彼は自工会の会長という事情があった。しかし今年5月に任期満了を迎えるので、役員退任が固まったのです」(同)

 岩村副社長の退任も既定路線だったというが、

「一昨年、タカタの“エアバッグ”問題が浮上し、社内ではリコールが予想されていた。岩村さんはリスク管理担当役員ですから、その対応で1年間“延命”していたにすぎません」(同)

 バッサリ先輩役員を斬ったホンダ流人事。だが、元役員は取引会社へ天下ったり、社友として厚遇されるという。

週刊新潮 2016年3月10日号掲載

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