自信満々が虚勢に見える日銀「黒田総裁」の矢は尽きたか?

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 風待草とは梅の異名で、春の風を期して待ち、そして咲くわけだが、そんな時節ながら、日本経済に春の足音は聞こえてこない。黒田東彦総裁(71)率いる日銀が、史上初めてマイナス金利の導入に踏み切ったのは2月16日のことだった。果たして、次の矢はあるのか。

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 矢の有無については後述するとして、まず日経平均の急激な下げっぷりを振り返っておこう。昨年末の大納会から僅か1カ月半の去る2月12日、1万9033円だった株価が1万4952円をつけた。つまり、下落率は20%を超えているわけだ。

「株価と内閣支持率とのあいだには強い相関関係があります。ですから、短期間でこれだけ大幅に下落したことに、菅さん(義偉・官房長官)以下、官邸幹部は焦っているんです」

 と官邸スタッフのひとり。

「これまで彼らは、株価の防衛ラインを1万7000円としてきました。それが1月中旬以降、そのポイントを割って1万6000円台にタッチしてしまった。ちょうどそのころ、黒田さんがマイナス金利導入を発表したのも、『官邸の意向』を踏まえてのこと」

 今度は、

「日銀の動きを受けた官邸の面々が、“1万5000円を割らないために手を打つ”と、守るべきラインの引き下げを決めたのです」

■銀行がタンス預金

 経済部デスクによると、

「差し当たって、銀行が日銀の当座預金に預けているのは約250兆円。大部分は金融緩和策として、日銀が銀行から買い取った国債の代金が振り込まれたもの。今回のマイナス金利の対象に、こちらは含まれません。新たに銀行が預ける分に、年マイナス0・1%の金利を付けるもので、10兆円規模とされています」

 では、先に触れた防衛ラインを突破し、1万4000円台をうろうろし始めたらどうするか。経済ジャーナリストの磯山友幸氏は、

「第2弾として、日銀に既に積んだ250兆円分もマイナスにする可能性がある。当然、銀行はそこに預ける意味がなくなる。このお金がちょっとでも株式市場に流れてくれば、効果は大きいと思いますよ」

 と、矢のインパクトを評する。しかしながら、物事には表と裏があって、逆に懐疑的な見方をするのは、小黒一正法政大教授である。

「銀行全体の営業利益は3兆円程度です。日銀の預金残高に対して、仮に1%のマイナス金利を適用した場合、どうなりますか。利益があらかた吹っ飛んでしまうことになるのです」

 そのような事態を銀行は忌避するため、預金を引き出さざるを得ない。だからといって、株式も含め、魅力的な投資先が出てくるというわけでもないのである。結果、

「お金は流通しないままなのです。これは極論ですが、各銀行が共同で金庫を運営し、お金を保管するということも考えられるでしょう」(同)

 いわば、銀行がタンス預金をするようなものだ。

 その一方で、日銀が年3兆円のETF(上場投資信託)を購入し、株価を下支えしていることに触れるのは、ロータス投資研究所代表の中西文行氏である。

「その枠を10兆円ぐらいにまで拡大する大胆な措置を取らなければ、市場にインパクトを与えられません」

 とは言うものの、

「でもそれは不可能でしょう。国家が介入しなければ市場を維持できないと自白するようなものだからです。昨年、中国政府が上海市場に介入した際と同じように、あからさまな株価操作は早晩行き詰る」

 矢がないわけではない。もっとも虚勢を張って肩に力が入ったままでは、流れ矢となりかねないのである。

「特集 『日本経済は崖っぷちか?』の客観的検証」より

週刊新潮 2016年2月25日号掲載

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