試写会“満員御礼”! 老作家の腹に「二階堂ふみ」

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「おじさま!」

 なんぞと呼ばれた挙げ句、

「のめのめを掻き分けるとすじがあるから、うまく唾をぬってベトベトにして」

 なんてお願いされたら……、しかもその相手は臀丸出しの二階堂ふみ(21)だ。

 4月1日より新宿バルト9ほかにて公開される『蜜のあわれ』の試写会が補助席を出すほどの人気という。

「それでも席が足りず、毎回10人ほどのお客様にお帰り頂いている状態です」

 と申し訳なさげに言うのは宣伝担当者。

「その要因は、バラエティ番組に出てから一般に知られるようになった二階堂さんと、真木よう子さんの出演、そして石井岳龍監督の人気でしょう」

 本作で4作目となる石井岳龍監督(59)だが、『狂い咲きサンダーロード』(1980)や『爆裂都市 BURST CITY』(82)といったバイオレンス映画の石井聰亙監督といった方がピンとくる方もいるかもしれない。その石井監督が挑んだのが室生犀星の同名小説。

 晩年の犀星が、「新潮」に59年1月号から4月号まで連載した作品は地の文なしの全篇対話。老作家〈大杉漣〉と人間の姿になった金魚〈二階堂〉とのラブストーリーで、真木の役どころなど幽霊である。

 混雑の中、試写を見た映画評論家の北川れい子氏は、

「二階堂さんや真木さんを使っている割には、大作ではないし、スケール感もない。だけどそれが余計に、老人の夢想と、文字通りあわれさを感じさせます。脚本はピンク映画も書く港岳彦さんですから、二階堂さんにはフルヌードでガチにカラんで欲しかったけど、昭和のレトロとエロスは良く出ていると思います」

 犀星はこの小説を映画として書いたと、後書きで告白している。少年と風船の友情を描いた仏映画『赤い風船』を見て、こういうものが書きたいと思ったというのだ。それが金魚との恋愛となり、〈そして私は愛すべき映画「蜜のあわれ」の監督をいま終えたばかりなのである。〉と。実際に映画となって、犀星の感想を聞いてみたいところだ。

週刊新潮 2016年3月3日号掲載

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