「そんなもの要らねぇずら」の長野県もついに「淫行条例」

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 長野県民の気質は、“生真面目で教育熱心”だと言われている。江戸時代の寺子屋の数、明治時代の就学率で全国1位だった実績から「教育先進県」を自負する一方、“そんなもの要らねぇずら”と青少年健全育成条例、いわゆる“淫行条例”のない全国唯一の県だった。が、背に腹は代えられぬ。

 長野県の阿部守一(しゅいち)知事(55)は今月1日、“淫行条例”制定の理由をこう語った。

「インターネットや携帯電話が普及する中で子供の性被害が増え、看過できない状況にある」

 17日開会の定例県議会に提出される条例案の骨子には、〈2年以下の懲役又は100万円以下の罰金〉との罰則が盛り込まれるという。条例案が県議会で承認されれば、東京都での施行から実に11年かかって、すべての都道府県で“淫行条例”が制定されることになる。それにしても、なぜ、今なのか。地元記者の解説では、

「4年前、県下の公立学校の教員が女子生徒に淫らな行為をして逮捕される事件が7件相次ぎました。そのなかに公立高校の教頭が含まれていて、県民の間に衝撃が走ったのです」

 県下の佐久市や塩尻市、そして東御(とうみ)市などでは以前から独自に“淫行条例”を制定していたが、教員の不祥事のなかには、その東御市の教師が2人含まれていた。

 また、2013年からの2年間で未成年女性の“淫行”被害が16件に上ったのだ。県警関係者が当時を振り返る。

「県外から来た加害者の多くは、“長野県には淫行条例がないことを知っていたので”と供述しました。当然、別の法律の適用を検討したが、結局、検挙には至りませんでした」

 条例案は県議会で可決される見通しだが、反対の声も根強いという。

「長野県には、これまで学校や地域、家庭で子供たちを守ってきた風土と歴史があり、“淫行条例”がないことを誇りだとさえ考えていた。そのため条例制定には、反対意見も少なくないのです」(先の記者)

 生真面目な一方、“議論好きで頑固”な県民には辛い選択なのでしょう。

週刊新潮 2016年2月18日号掲載

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