豊川悦司が惚れた「浪花のジョー」20年実録

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『あしたのジョー』ならぬ『ジョーのあした』は、阪本順治監督が1995年から2014年まで20年にわたり、浪花のジョーこと、辰吉丈一郎(45)を追い続けたドキュメンタリー映画。

「阪本監督がボクシングを題材にした『どついたるねん』でデビューしたのは、辰吉のプロデビューと同じ89年でした。雑誌での企画が縁で親しくなり、辰吉の姿を追った『BOXER JOE』(95年公開)を監督して、もっと撮りたい思いにかられた」(映画記者)

 阪本監督自らインタビュアーを務める自主制作の手法。20年間で17回、辰吉や家族に向き合った。WBC世界バンタム級の王者に輝いたジョーだが、この映画に試合風景はほとんどない。

「活躍をなぞり称賛するドキュメンタリーではありません。親しい仲でも馴れ合いにならず、辰吉さんの話をじっくり聴くことで人間を浮かび上がらせています。家族の愛とか、お涙頂戴にせず淡々とした作りです。現役にこだわる強い意志を、辰吉さんが気負うことなく語る姿はファン以外の心にも響くと思います」(映画評論家の北川れい子さん)

 ナレーションは阪本作品によく登場する豊川悦司。辰吉のファンで親交も深い。

「会話の間を縫い、静かに寄り添う感じで良かったです。説明調の作品ではないので、ナレーションそのものが少ないのですが、辰吉さんの言葉や信念が引き立つようにしていましたね」(同)

 それにしても20年。辰吉が引退したら作品にまとめようと阪本監督は考えていたらしい。辰吉の次男のプロ入りを撮影の区切りにしたが、当の辰吉は、「俺が終わっていないのに、何で映画が先に終わるんだ」と冗談を飛ばしていたという。

 2月20日、大阪などを皮切りに全国で公開される。

週刊新潮 2016年2月18日号掲載

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