清原容疑者 覚醒剤購入先の「密売人」ご家族の告白 「清原さんが家にやってきた日」

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 からっ風がその強さに乗じ、女子高生の短いスカートにちょっかいをかけている。〈梅一輪一輪ほどの暖かさ〉と嵐雪が詠んだように、群馬県内は「春兆す」とは言い難い時候である。2月1日、愛車メルセデス・ベンツを自ら駆って都内を出た清原は、その風が吹く方へ向かっていた。親しく交際する密売人と接触し、覚醒剤を入手するために。

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なぜ、覚醒剤の魔の手から逃れられなくなってしまったのか

 密売人のご家族の告白については後に披露するとして、まずは、清原と彼を追い詰めた警視庁組織犯罪対策5課の捜査員の動きをおさらいしておこう。

 この日、県内で覚醒剤を受け取った清原は都内へとんぼ返り。そのまま港区芝の「ザ・プリンス パークタワー東京」へ投宿した。そして翌2日の夕方にホテルをチェックアウトし、その後、自宅となっている同じ港区東麻布の短期滞在型マンションの一室へ帰宅したのである。

「午後8時ごろ、ガサ状と強制採尿令状を持った捜査員が管理会社から鍵を借り、1LDK・54平方メートルの部屋へ踏み込んだときに……」

 とは社会部デスク。

「キヨは、ダイニングの椅子でくつろぐように座っていました。目の前のテーブルに、0・047グラムの覚醒剤が入った小袋が置かれ、彼の左手には、開封したばかりの注射器と先端が斜めに切られたストローがあった。つまり、覚醒剤を注射するところだったんです」

自宅マンション

 そればかりか、

「リビングにある低いテーブル上およびキッチンの戸棚には裸の注射器が、そしてベッドルームの床には、先端が黒ずんだガラスパイプが転がっていたのです」

 いわばシャブの館と化していた恰好なのだ。

 ここで、ところ変わって群馬県みどり市。

 県東部に位置する人口約5万人のこの街には、「渡良瀬渓谷」を除き、特段耳目を引くような観光スポットは見当たらない。市内の両毛線岩宿駅に停車するのは鈍行ばかりで、それさえも1時間に上下線合わせて4本前後と、寂寞の気に満ちているのである。

「本当に清原さんにクスリを売っていたんでしょうか。確かにうちの娘の旦那は、“清原さんと付き合いがあるんだ”と言ってはいましたが……」

 ポツポツと逐一を話し始めたのは、清原に覚醒剤を渡した、他ならぬ密売人の義母である。

「清原さんはこれまで2度、この家に来られました。いずれも夏でしたから、短パンにTシャツ。1〜2時間くらいで帰って行くのですが、別に変な臭いも大きな物音もしませんでしたよ」

 捜査関係者が後を受けて、こんな説明をする。

「この売人は40代半ば。もともとコックで、桐生市内でイタリア料理店を経営していましたが、それを潰したあとは根なし草です。暴力団に所属しているわけではありませんが、何人かの協力者を使って覚醒剤を売りさばいてきました。でっぷり太った体型で下戸。性格は本当に穏やかで人の話はきちんと聞くし、声を荒らげることもない。ひとことで言えば、気が小さいタイプなんです」

■口座も監視

 改めて義母に、清原が逮捕前日の2月1日に、群馬県内で覚醒剤を入手していたことを質(ただ)すと、

「この日は絶対に我が家へは来ていません」

 とは言うものの、

「“いま清原さんと話していた”なんて言っていたことがあり、月に何度も電話でやりとりはしていました。それに、“清原さんにサインをもらったんだ”と言って、サイン色紙を見せてくれたこともあります。それに、義理の息子は腰が悪いのですが、“とてもよく効く湿布を清原さんがくれた”と嬉しそうにしていました」

 といったように、清原が交遊録中の人物だと打ち明けるのだ。だが、起居をともにしてきた義理の息子は、昨年10月、家を突然出て行った。

「何が理由でこうなったかよくわかりません。そうは言っても娘はこちらに住んでいますから、毎日ちょっとだけやって来ていたようですがね。ただ、清原さんの逮捕後は一切、顔を見せていないのです」(同)

 ところで当局が、清原の振る舞いをほとんど完璧に捕捉できた理由にも触れておかねばなるまい。

「キヨがクスリに手を出しているのは間違いないと判断されたのが去年8月のこと。それ以降、当局はほぼベタ張りで行動確認を行なっており、彼の主な立ち寄り先であるサウナにも捜査員が裸で潜入していた。逮捕の数日前にマンションのゴミを漁り、ティッシュについた汗から覚醒剤の成分が出たことで、捜査が一気に進んだんだよ」

 とは、捜査関係者のひとり。

「清原が口座からカネを引き出すタイミングを定期的に見ていたんだ」

 としたうえで、こう継ぐ。

「彼は普段、クレジットカードを好んで使う。だから、数十万レベルでも口座から引き出したりすれば目立つ。そのカネを持ってクスリを買いに行くのではないかということで、本人へのマークを強めるんだよ」

 これは、いわゆる振り込め詐欺捜査でも用いられる手法である。「捜査関係事項照会書」なる書類を金融機関へ提出すれば、口座残高の照会が可能なのだ。

「警察が疑わしいと見なせば裁判所の令状は不要。答えるか否かは任意だけど、金融機関はほぼ応じるよ」(同)

 さらに捜査当局は、Nシステム(自動車ナンバー自動読み取り装置)や携帯電話の通話履歴情報を最大限に活用している。

「清原は月に2、3度、高速道路を使って群馬へ出向き、夜間にICを下りてすぐの場所などで密売人と接触していることがわかっていた。今回の逮捕時にも、彼のベンツと密売人の車が同じ方面にいるのを確認し、清原が都内へ戻るのを待っていたんだ」(同)

 それに加えて、当局を取材する警視庁担当記者に対しても口をぬぐってこんな芝居を打っている。

「去年の11月末くらいでしょうか。“キヨの捜査は潰れた”と各社は上に報告をあげている。当局としては、“極秘にやらないと逮捕できない”ということだったんでしょうが、我々としてはまんまと踊らされたわけです」(先のデスク)

 では最後に、清原とこの密売人の接点は何なのか。

「共通の知人を介して知り合ったと……そう、田辺大作さんです」(義母)

 仮名ながらこの田辺なる人物は、清原と覚醒剤とを深く結びつけた男である。 

 次章で当人が独白する。

「特集 総力取材!『清原和博』汚れたお薬手帳」より

週刊新潮 2016年2月18日号掲載

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