いずれは移住も? 「海外不動産投資」のツボ

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「国内でのアパート・マンション経営でさえ敷居が高いと思っているのに……」――多くの人が、“海外不動産投資”と聞いてこう思うだろう。言葉の問題はもちろん、税制や所有権、商慣習の違いがあるだけに、数ある投資手法の中でも難易度は高い、と考えがちだ。

 だが最近、海外不動産投資への関心が高まっているという。いったいどこに魅力があるのか。

「まず資産を守る基本として、保有する資産を円資産と外貨資産に分散することを考えるべきです」

 と言うのは、資産デザイン研究所代表の内藤忍氏だ。

「その外貨資産の運用方法として、海外不動産への投資という選択肢があります。確かに不安やリスクはあるでしょうが、保有資産から毎月定期的な収入を得る方法は、低金利の今、不動産以外にはないんです」

 でも不動産投資なら、国内でもできる。表面利回り8%以上、などと謳う業者もいたりするが、

「今後の人口減少や“空き家問題”を考えれば、現実はそんなに甘くない。不動産経営が安定した投資として成立するのは、極論すれば東京23区だけ、と言っていい。都心の一等地なら、利回りが2〜3%も行けば上等ですよ。それにだいたい、都内の物件は高すぎて、相当の資産家でないと投資は難しい」(不動産業者)

 ところが、である。海外不動産投資なら、もっと高い利回りが期待できるのだ。

「アメリカやカナダ、オーストラリア、ニュージーランドといった先進国ですと、利回りは5%以上、フィリピンやカンボジア、ベトナムといった東南アジアの新興国なら8〜10%が期待できます」(内藤氏)

 しかも円安になれば、円換算の資産価値も上昇する。

「これは極端な例ですが、2011年、1ドル83円の時に9万ドルで買ったアメリカの物件の価値が、現在は12万ドル。1ドル116円換算で資産価値が1・8倍ほどになっている」(同)

■長期的な運用を

 賃貸の方法も様々で、大都市圏なら一般住宅として、ハワイのような世界的なリゾート地なら、別の方法も。

「コンドミニアムなどは、自分が毎年利用する期間以外、短期的に貸し出す“バケーションレンタル”という方法もあります」(同)

 こう見てくると、なんともオイシイ投資法のように思えるが、当然リスクも考えなければならない。自らも海外に7つの不動産を持つ、アジア太平洋大家の会会長の鈴木学氏は、

「新興国の物件の方が利回りがいいからといって、すぐに飛びつくのは危険」

 と指摘する。

「新興国の場合、過剰供給による家賃相場の下落や、思うように借り手が見つからないという問題が発生しがちです。しかもそうした情報が、先進国に比べると極端に少ない。初めて海外不動産に投資するなら、利回りは低くても過剰供給となりにくい先進国か、すでに賃貸実績のある中古物件を狙うほうがいいでしょう」

 海外の不動産に投資するのに、利回りのことを考えるのは当然としても、

「投資先の国が好きか、住んでみたいか、といった投資家本人の思いも必要だと思います」(同)

 それは、海外不動産投資の最終目的を何にするか、という問題につながる。

「安定的に収入を得続け、資産価値も上がっていれば売却することもできます。定められた条件を満たせば、現地での相続税が発生しないので、子供に承継することも可能ですし、なによりその国、その物件が気に入っているのなら、賃貸をやめて移住することだってできるのです」(同)

 一部のリゾート地には、観光客の短期滞在にも、移住者にも優しいコンドミニアムが増えつつある。資産運用と終の棲家の両方をまかなうことも可能なのだ。そのためにも、

「海外不動産は投機の対象ではなく、長期的な資産と考えるべきです」(内藤氏)

週刊新潮 2016年2月18日号掲載

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