“言論の不自由”とは笑わせる「日弁連」会長選

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〈選ばれた者は、凡人社会の法を無視する権利がある〉とは、ドストエフスキー『罪と罰』の一節だが、遵法精神の“権化”であるはずの弁護士でさえも、そうした錯覚に陥ってしまうのだろうか。

 約3万7000人の会員数を誇る日本弁護士連合会(日弁連)。2月5日に行われる会長選挙を前に、“表現の自由”を巡る騒動が内部で勃発していたのだ。

弁護士会館

 出馬したのは、刑事司法改革推進を掲げる大阪弁護士会元会長で日弁連元副会長も務めた中本和洋弁護士(69)と、法科大学院の廃止などを訴える東京弁護士会の高山俊吉弁護士(75)。今回からネット上での選挙運動が解禁されたことが、騒ぎの発端になったようだ。

 週刊法律新聞元編集長で司法ジャーナリストの河野真樹氏が言う。

「改訂された会長選挙規程では、候補者が公式サイトで主張を展開するのは認めても、個々の会員はネット上で選挙運動をしてはいけないという。それを根拠に、日弁連は会長選のことを話題にしたブログにも削除要請を出したのです」

 前回の選挙では、個人ブログで特定候補への支援を呼びかけても削除など命じられなかっただけに、法律のプロたちも黙ってはいない。“候補者への論評も選挙運動なのか”“言論の自由に反する”“憲法違反では”などと、日弁連への疑問を次々に呈したのだ。

 特に議論を呼んだのは、候補者である中本弁護士の“献金問題”に触れたブログが、軒並み削除の対象となったことである。

「1月中旬、中本弁護士が自民党政調会長の稲田朋美弁護士に献金を行っていたことが報じられましたが、その件がネット上で話題になって以降、日弁連が削除要請を始めたこともあって、様々な憶測を生む結果になっています。献金については中本氏自らがネット上で認めて弁明もしていますし、ブログ以外のSNSで多くの人の目に触れ拡散している情報なのですが」(同)

 図らずも、かの国を彷彿とさせる“言論の不自由”が露呈したのだ。

週刊新潮 2016年2月11日号掲載

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