「ASKA」精神医療センターで“反原発”“永久機関”を語る 脳へのダメージは深刻

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 2014年5月に覚醒剤取締法違反で逮捕、同年9月に執行猶予付きの有罪判決を受けたASKA(57)。今年初めには〈集団盗聴盗撮〉の被害を訴える長文をブログに綴り、ファンの不安を駆り立てた。ブログの書き込みが途絶えてからまもなく、ASKAは閉鎖病棟を備えた精神科病院に入院、隔離されたという――。

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執行猶予付きの有罪判決を受けたASKA(57)

 逮捕から約2年が経ったいまになって、なぜ精神科病院に隔離されるほど容態が悪化したのか。もしや、再び覚醒剤に手を出していたということなのか。

 実際、ASKAはブログ騒動と同様に実生活でもごく親しい人々を戸惑わせ、“疑い”が取り沙汰されていた。芸能記者が明かす。

「ここ最近、ASKAは芸能界の知り合いに片っ端から電話をかけて、“お願いします! 復帰したいんです!”と懇願していた。ただ、彼の話は支離滅裂なので“こいつ、またやってるんじゃないか……”と距離を置かれていました」

 しかし、社会部デスクは、彼が再び覚醒剤に手を出した可能性は低いという。

「昨年6月、ASKAの供述がきっかけで、歌舞伎町に本部を持つ住吉会系暴力団の幹部が逮捕されました。この組織は“新宿の薬局”の異名を取る違法薬物の卸元。ASKAも知人を通じてここから覚醒剤を調達していた。つまり、自らの証言で唯一の入手ルートを潰してしまったわけです」

■止めどない猜疑心

 となれば、やはり逮捕以降、ASKAは薬物に手を出していないはずだ。覚醒剤を断って2年近くの月日が過ぎれば、健康な身体を取り戻していると考えるのが一般的だろう。だが、たとえ目の前の誘惑を退けようと、長年に亘って蓄積した脳へのダメージは不可逆的で、いつまでも元常用者を苦しめ続けるという。

 精神科医の片田珠美氏は、今回の入院を「非常に賢明な選択」だと語る。

「常に盗撮・盗聴されているように感じるのは“注察妄想”。また、実在しない集団と戦わなければならないと思い込むのは“包囲襲来妄想”と呼ばれ、どちらも覚醒剤の残存症状によって引き起こされる被害妄想です。覚醒剤依存症からさらに進んだ、覚醒剤精神病の状態だと言えます。その特徴は止めどない猜疑心の拡大で、まさにASKAさんの症状そのものです」

 ASKAの場合、覚醒剤を断った直後には、こんな症状が見受けられた。

「あれもドラッグの後遺症だったのかもしれません」

 とは、千葉県内の精神医療センターで、危険ドラッグ依存症の治療を受けていた元患者。14年7月に保釈され、この施設に入所したASKAと2カ月近く交流を持ったという。

「病室は3~4人が入る大部屋で、食事や風呂も私たちと一緒。朝7時に起きて、夜の9時には就寝する健康的な生活を共にしました。サインを求める患者が病室の前に列をなしても、怒ったりせずに淡々と応じていた。ただ、気になったのはオカルト趣味や陰謀史観、反原発に偏った発言です」

 たとえば、朝食にカレイの煮つけが出された時には、

「“深海魚はセシウムをたくさん含んでいる。絶対に食べちゃダメだ”と言って箸をつけなかった。そこから、“国は大量の放射能漏れを隠蔽している”という話に続くのです。他にも、永久機関に対する熱い想いを語っていました。化石燃料を使わずエネルギーを産み出すシステムにかなり投資している、と」(同)

 治療を受ける身でありながら、虚実入り混じった“妄想”を止めることはできなかったのである。

■治療法なし

 この施設を出たASKAは、昨年1月から自宅で静養を続けていた。本来であれば、歌手としての再起を図るため、治療に専念すべき大事な時期だろう。しかし、彼は妄想ブログにばかり執着した挙句、入院に追い込まれてしまう。

「どれほど治療に時間をかけても、薬物乱用による精神中毒症状が改善したという例はほとんど聞きません。覚醒剤依存症に真の治療法はないのです」

 東京慈恵会医科大の柳田知司客員教授はそう断じる。

「覚醒剤の主成分はメタンフェタミンと、アンフェタミンという物質です。どちらも、ドーパミンの働きを調節する“側坐核”に作用します。ドーパミンは食事や睡眠、性行為といった欲求が充足すると分泌される。ただ、覚醒剤に含まれる成分は、強制的にドーパミンの分泌量を増やして快感を覚えさせる一方で、強烈な精神中毒症状という副作用をもたらします」

■逮捕前から重篤な状態

 ASKAと同じく、多くの常用者が不眠や幻覚、記憶障害やうつ状態に襲われ、被害妄想に取り憑かれる。さらに、脳の血管が狭窄することで脳梗塞のリスクも増す。ASKAが逮捕前年に、脳梗塞の前兆といわれる一過性脳虚血症と診断され、活動を休止したのも偶然ではない。実はその頃、彼は精神科のカウンセリングを受けていたという。当時を知る関係者によれば、

「異常な言動を見かねた周囲の勧めで、病院に通っていたのは事実。ただ、投薬治療を続けたものの、もはや手の施しようのないほど重篤な状態だった。その後も覚醒剤の乱用に歯止めが掛かることはなかった」

 結果、すでに逮捕前から脳細胞は蝕まれ、その機能は修復不能なまでに破壊されていたのだ。

「ASKAさんのように、薬物をやめてから1年以上経っても症状が続くのは明らかに“フラッシュバック”によるもの。あたかも、薬物を摂取した時と同じように負の症状に見舞われてしまうのです」(前出・柳田氏)

 フラッシュバックがどれだけ強烈に現れるかは、使用した覚醒剤の量や頻度に大きく左右される。ちなみにASKAは、薬物を販売した暴力団幹部の公判に証人出廷した際、“毎日3回、1回につき0・1グラム使っていた”と証言している。

「通常、覚醒剤の1回分の使用量は0・03グラムとされます。しかも、その効果は10~24時間と他の薬物と比べても長く持続する。にもかかわらず、その3倍以上の分量を毎日3回も摂取してきたわけで、逮捕されるまで事件を起こさなかったのが不思議なほど。また、フラッシュバックは過去の記憶がとりわけ強いトリガーになると言われる。ASKAさんは自宅に戻って、覚醒剤を吸った部屋の風景や匂いから当時の記憶を呼び起こし、フラッシュバックに襲われたのでしょう。今後も、いつフラッシュバックが起きてもおかしくない。残念ながら、彼が芸能界に復帰するのは難しいと言わざるを得ません」(同)

 福岡県の実家に住むASKAの実父に尋ねると、

「最近は東京とは疎遠ですし、入院なんて連絡も貰っていません。マスコミの方と話すのは、もうね……」

 代表曲である『万里の河』で歌ったように、ASKAの栄光も、ただ遠くへ流れて行くだけなのだ。

「特集 芸能界への復帰は絶望的! 覚醒剤が不可逆的に脳細胞を破壊! 精神科病院に隔離された『ASKA』の治らない後遺症」より

週刊新潮 2016年2月4日号掲載

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