「暗殺国家」と名指されても「プーチン」の面に小便

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 マリー・キュリーが夫のピエールとともに、1898年に発見したポロニウム。当時ロシア占領下にあった彼女の祖国ポーランドの解放を願ってそう名付けられたが、この事件を彼女が聞けば泉下で何を思うだろう。

 2006年、ロシアの情報機関FSBの元職員で、英国亡命中だったアレクサンドル・リトビネンコ氏が殺害された事件だ。

 1月21日、英国の独立調査委員会が発表した報告書によれば、実行犯は2名、殺害に使用されたのはポロニウムの放射性同位体であるポロニウム210。殺害はほぼ間違いなくFSBの指示だったとし、プーチン大統領承認の下で実行された可能性が高いという。

「暗殺国家」と名指されたロシアはあっさり否定、「英国流の洗練されたユーモアだろう」などと「なんとかに小便」だが、報告書を精査した国際ジャーナリストの木村正人氏は言う。

「これで100%、実行犯は特定されたと言っていい。防犯ビデオやクレジットカードの履歴、毒物の痕跡調査などから、秒単位で犯行時の様子が明らかになっています」

 ポロニウム210は放射能が極めて強く、青酸カリの37万倍の毒性を持つが、特定の容器に入れれば放射線は洩れず、運搬も容易だという。

 軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏は言う。

「非常に稀少な物質で、精製には国家規模の関与が必要です。ロシア西部にある旧ソ連時代の核開発秘密都市サロフに世界で唯一、製造可能なプラントがあると言われています」

 04年にチェチェンの活動家2名が死亡した事件や、昨年5月に反プーチン派ジャーナリストが突如昏睡状態に陥った事件なども、ポロニウムの疑いが濃いという。

「暗殺国家」の汚名が消えることなどあるのか。

週刊新潮 2016年2月4日号掲載

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