「年収160万円削減」「早期退職募集」でも先が見えない「朝日新聞」の落日

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 かのタイタニック号は氷山に衝突した後、船長らの必死の排水作業もむなしく、結局真っ二つに折れて海の底に沈んだ。朝日新聞の未来に待ち受けているのも同じ悲劇なのか。2年前の「慰安婦誤報」が巨船の腹に穿(うが)った亀裂は大きく、急激な部数及び広告費の減少をしのぐため、弥縫策(びほうさく)を打ち出したが……。

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朝日新聞東京本社

 松飾りもとれない1月6日の昼下がり、朝日新聞のさる地方支局。40代の中堅社員は、欠伸をかみ殺しながらPCを立ち上げた。何気なく社員専用のHPを開き、そこに掲載された社報に目を通す。表題は“人事・給与制度改革と定年延長を提案”となっている。

「まあ最近、うちも厳しいから多少は給料が減るのも仕方がないかな……」

 そんな感想を抱きつつ、画面を下にスクロールさせた彼。次の瞬間、それまでのお屠蘇気分はすっかり吹き飛ぶことになった。

〈今回の給与制度改革は、給与水準の抑制を伴い、みなさんにとって大変厳しい提案にならざるをえませんでした。(中略)平均年収は、16年度対比で約160万円減少する見込みです〉

 会社から一方的に通知された衝撃の給与削減案だった。組合と協議の上、来年4月からの移行を目指すというが、改定例によれば、年収の削減幅は基本的に対象年齢の上昇とともに大きくなる。例えば30歳なら年収は平均で88万円削減され、786万円に。40歳の場合、マイナス額は192万円となり、削減後の年収は1053万円である。

 まだまだ高水準とはいえ、朝日社員のプライドを打ち砕く改革案には違いない。また、今回朝日が進めようとしているリストラはこれだけではない。昨年11月末、朝日の組合員の元に届けられた機関紙には、次のような見出しが躍っていた。

〈早期退職 40歳以上で募集〉

〈年収40%×最大10年分を一括支給〉

 募集は今年1月12日からと5月9日からの2回に分けて行われるという。

「新年会でも早期退職制度が話題になりました。我々40代だとだいたい5000万円は貰えるそうです。そのお金は老後に取っておいて、別の仕事を探すのも悪くないかなって思い始めています」(前出の社員)

■「3年間で100万部減」

朝日新聞 渡辺雅隆社長

 朝日が早期退職希望者を募るのはこれが初めてではなく、赤字に転落していた2010年にも同様の募集を行っている。その時は112名の応募があり、ローマ支局長などを歴任した外報部の幹部らが退職した。同時期に給与も月平均数万円程度削減。それらが奏功したのか、11年には黒字に戻した。

「でも、その後も肝心の部数が下げ止まらない。この3年間でも100万部落ち、昨年11月時点で660万部まで減りました。売上はこの10年で1000億円以上減少し、広告費も半分以下に減っています。それで、10年に続いて今回、新たなリストラ策が提示されたわけです」(同)

 早期退職に応募できない世代の社員からは、

「現場記者は10年ほど前から経費が使えず、取材先と飲む金も自腹です。今後は取材先と飲む回数を減らすしかないですが、それでネタを取れるでしょうか」(30代記者)

 といった怨嗟の声も聞こえてくるが、朝日ウォッチャーでコラムニストの勝谷誠彦氏はこう言う。

「こんなご時世ですから、リストラは当然でしょう。しかし朝日の場合、きちんと慰安婦誤報を検証し直して信頼を取り戻すのが先決なのではないでしょうか」

 穿たれた亀裂の深刻さに気付けなければ、巨船の沈没を止めることはできまい。

「ワイド特集 炎上中に寒中見舞い」より

週刊新潮 2016年1月28日号掲載

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