この道30年! “鑑定書”作成に1カ月以上かかることもある「8万円の占い」〈日本の超高級品ガイド(8)〉

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 神楽坂の出版社に勤務する記者が実際に見聞し、お届けする本シリーズ。「30万円の緑茶」や「1600万円のゴルフクラブ」などを紹介してきたが、最終回となる第8回は、東京・渋谷の「8万円の占い」を取り上げる。“実のあるモノ”か、それとも“ムダに高いモノ”か――。

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 この道30年のマダム・セリカ(年齢非公表)は、生年月日を聞き占う「算命学」の使い手である。

「長らく30分8000円か60分1万6000円を基本にやってきました。それでも時々、お礼として多少のお金を包んでくださる方がいまして。ただ、そういったものはどうしても受け取りづらいでしょう。ですから、その方の1年や大事な決断を占うというスタンスで、8万円コースを始めました。とはいえ、表立って宣伝しているわけではありません」

 それというのも、このコースは時にマダムの心身を甚だ疲弊させるからだ。

■占ってもらった

 会社の跡継ぎを長男か次男か、いずれにすべきか。最近、そんな相談をもちかけた経営者がいる。通常ならトップの生年月日を聞くだけだが、8万円コースはさに非ず。社を巡る奸智の輪を突き止める術にはただならぬものがある。

「長男と次男のみならず、それ以外の家族や会社の役員など、多くの方の生年月日をお聞きし、方位や手相、人相なども含めて多角的に占って行きます。結果は『鑑定書』としてお渡しするのですが、A4用紙で何十枚にも及び、作成まで1カ月以上かかるケースもないわけではありません」

 1万6000円を支払い占ってもらった。マダムが乱数表のようなものを取りだし、記者の生年月日と照合していく。彼女の言葉は大要、次のようなものだった。

〈先祖が人助けをして徳を積んでおり、あなたはその徳を受けている。だから、そんなに苦労しない。だけど好奇心が強いから、あれもこれもやってみたい。真面目な奥さんはそのことで気を揉んでいる〉

 駁(ばく)す余地がない。そうは言っても、「この編集部にいつまで居られるか」という質問ははぐらかされた。ヒヤッとした新年早々である。

「特集 ムダに高いモノもある日本の超高級ガイド」より

週刊新潮 2016年1月14日迎春増大号掲載

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